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変態超能力をプレゼントDX  作者: ヒィッツカラルド
50/61

50・指切りげんまん

三日月堂ビル五階会議室に静かなる仰天が広がっていた。


唐突な告白だった。


本日の来客である佐々木茜の唐突な発言に異能者会メンバーが唖然としていた。


同級生であり、クラスメイトであり、親しい友達である月美すら知らなかった茜の秘密。


それは彼女が異能者である真実であった。


「ちょっと、待ちなさい……。キミ、今なんと?」


驚いた三日月堂が、確認のために訊き直すと、茜がハッキリと言う。


「ストーカーが異能者なら……。それは多分、私も異能者だから……。だから特別視して……、付け回すのかも」


千田がボソリと呟いた。


異能者の法則。


「異能者は異能者にしか恋しない……。愛さない……」


呟いてから千田が立ち上がる。


今度は茜を見ながら大声を上げた。


「キミは、異能者だったのか!」


勢いのあまり座っていたパイプ椅子が後ろに倒れた。


派手な音が鳴る。


大声に怯えながら身を竦める少女は、小さく二度頷いた。


「えーーーーーーーーーーーー!」


茜の隣に座る月美が驚きのあまりワンテンポ遅れてから立ち上がって叫んだ。


千田よりも派手な音を立てて椅子を転倒させる。


どうやら月美も知らなかったらしい。


月美のこんなところも間抜けで可愛い。


呆れながらもほのぼのと微笑む龍一。


もう本当にラブリーである。


冷静を気取る三日月堂が、着ているジャケットの襟を直しながら問う。


「キミは、いつから異能者に?」


「さ、三週間ぐらい前です……。後母等町駅で、パンドラ爺さんに出会いました。異能者に関しての説明が書かれたチラシも貰いました」


三週間ぐらい前と言えば、龍一や月美と同じぐらいの時期だ。


立ち上がっていた千田が事務机から自前のノートパソコンを取って来る。


「三週間前っていったら……。キミ、この画像を見てくれ!」


千田が茜に見せたのは、桜が念写した画像だった。


念写の瞬間に髪の毛で顔を隠す女性。


同時期に念写された四人。


その内で、まだ発見されていないのが、この写真の女性だ。


「これは……?」


「我々の仲間が念写した写真だよ」


「この洋服……」


「彼女に念写される瞬間、どこかから見られている感覚がするはずだ。キミ、そんな経験ないかな?」


「あ……」


茜が何かを思い出した様子だった。


口元を手で隠す。


やはり見られているような経験が有るようだ。


「何度か凄く見られている感覚が……。何処だろうと首を左右に振って探したんですが、分からなくて……」


見ている相手を探して首を振り、そのせいで髪の毛が乱れて顔を隠した。


その瞬間にシャッターが押されたのだろう。


まさに偶然の産物。


桜は何度も念写したが、毎度こう写ると言っていた。


おそらく茜も、毎回念写される瞬間、首を振りまくり相手を必死に探していたのだろう。


偶然に偶然が重なり合った超偶然の産物だが、なんとも間抜けな真実である。


念写の写真を元に、今日まで彼女を探していた面々が脱力に肩を落としながら疲れた表情を作っていた。


特に月美にしてみれば灯台もと暮らしである。


何せいつも側に居る友達を探していたのだから。


「まあ……、いいじゃないか。一つやらなければならないことが片付いたんだし……」


苦笑いながら言う三日月堂。


彼もまた、どっと疲れた感じである。


「それに、その子が異能者なら、ストーカーのほうも異能者である可能性が高まる。ストーカーは彼女に好意を抱いて毎日毎日しつこくストーキングに励んでいるのかもしれませんからね」


「異能者は異能者にしか恋しないか……。嫌な形の恋心ですね。迷惑すぎます……」


そう述べた月美の目は笑っているが、口元が引きつっていた。


「相手が異能者なら、やはり捕まえるか。三日月堂よ?」


腕組みをしたままの朝富士は、いつもながら横柄だったが随分と乗り気である。


なにやら異能者捕獲への信念のようなものを感じた。


このダブルのスーツを着込んだエリート中年は、異能者を捕まえるのが好きなのだろうか。


銭湯で堂々と覗きを繰り返していた山国武こと、尻でバナナの皮を剥くお坊さんを捕まえたのも朝富士と聞く。


それとも案外に正義感が強いのかもしれない。


悪行が許せないだけなのだろうか。


真相は訊いてみないと分からないが、まだ龍一は朝富士と気軽に話せるほど親しくは無いのだ。


音もなく立ち上がる三日月堂が視線だけで朝富士を見た。


「捕まえますとも、朝富士さん。相手が異能者である可能性が高まり、ましてや悪事を働いているのです。ストーキングは立派な犯罪です。ほっとけませんね」


三日月堂が佐々木茜の前に移動した。


座ったままの彼女が三日月堂の顔を見上げる。


「佐々木さん。この依頼をお受けいたしましょう。もちろん報酬は要求しません。ただし――」


「ただし……?」


三日月堂がニッコリと笑った。


父親が幼い娘に向けるような暖かく優しい笑みだった。


男たちに囲まれ緊張していた茜の心が少しずつ和んで行く。


「ただし、僕と指きりげんまんをしてもらいます」


微笑む三日月堂が小指だけを立てて前に出すと、全身から不思議なオーラが揺らぎ出る。


威嚇的でも、威圧的でもない。


柔らかく、暖かいオーラだった。


指きりげんまん――。


子供時代によく使われた約束の儀式。


童謡のような歌も有る。


三日月堂は、その指きりげんまんを言っているのだろう。


立ち上がった茜が、三日月堂の小指を見ながら反芻した。


「指きりげんまん、ですか……」


「そう、指きりげんまんで、僕と約束してもらいたい」


何を約束するのかと、疑問に思う表情で茜が小首を傾げた。


約束すること自体はやぶさかでない様子だったが、何故に指切りげんまんなのだろうと不思議な顔をしていた。


三日月堂が約束事の内容を延べる。


「約束してもらう内容は、異能者の存在を異能者以外には話さない。ばらさない。それと超能力を悪用しない。この二つです。この二つを守るよう僕と約束してもらいたいのです」


この約束は、龍一と月美もしている。


異能者会に入会するさいに三日月堂と約束していた。


指きりげんまんでだ。


その時も三日月堂と指切りげんまんを交わしている。


「僕の超能力は、約束効果向上能力なんだ。解り易く言うと、僕と約束をした内容は、破り難くなる。本人が勝手に守ろうと努力するようになる能力なんだ。例えるなら催眠術に近いのかな」


そうである。


三日月堂の超能力は、約束効果向上能力。


精神補佐系の能力だ。


彼との間で結ばれた約束事は、普通よりも守られる可能性が高くなる。


絶対的な契約効果を齎すわけでないので、破ることも可能だ。


だが、破ることに利益が発生しなければしないほど、約束の内容がたいした内容でないほどに、三日月堂の能力は効果を発揮する。


逆に「あいつを殺してくれ」とか「自殺してくれ」など、本人の意思とはそぐわない約束を結んでも、効果は発揮しない。


容易く破れる。


無理矢理の約束に効果がないのだ。


だから三日月堂の能力を最大限に使うならば、禁煙やダイエットをしたいと思っている人物が、それらを三日月堂と約束すれば、目標を叶え易くなる。


三日月堂の約束効果向上能力とは、そう言った能力だ。


そして約束を破っても罰は与えられない。


罰が伴うような契約能力とは違うのである。


ちなみにジャイアントスパイダーズの面々が、カヲルのことを世間にばらさないのは、三日月堂と約束したからだ。


このように多くの異能者や、その関係者と三日月堂は同じような約束を結んでいる。


これにより情報漏洩を防ぐのに活躍しているのだ。


「分かりました。お約束します」


茜が三日月堂の小指に自分の小指をゆっくりと絡みつける。


随分と懐かしい仕草に、少し照れている。


「まあ、これも、お近付きの挨拶だと思って気楽にね」


「はい……」


二人は指きりげんまんを歌いながら約束を交わす。


子供じみた行為に茜は気恥ずかしそうだったが、これで彼女も三日月堂の術中に落ちたことになる。


異能者に関するすべての秘密を、部外者に語ることはないだろう。


指きりげんまんを終えた三日月堂が、元居た席に戻りながら茜に訊いた。


「ところでキミの超能力はどんな能力なのですか。差し支えなければ教えてもらいたいのだが」


本人の許可無く黙示録に記入するためだろう。


「はい、いいですよ」


一呼吸入れてから茜が自分の超能力の内容を語りだす。


「私の超能力は文章記憶能力です。瞬間記憶能力の文章だけバージョンと言えばよろしいでしょうか。自分が理解できる国の言葉なら一生記憶できる感じです」


驚きと憧れの眼差しで千田が呟いた。


「文章のみの記憶術ですか……。いいね。それ」


「はい、国語辞典は丸暗記しましたし、一度読んだ小説は原本を見なくても一字一句間違わずに語れます」


「凄いですね……」


売れてなくても小説家である千田は活字を扱う人生だ。


彼女の能力を羨ましがっている。


「今は日本語と英語ぐらいしか記憶していませんが、もっともっと多国語を勉強していきたいと思っています。そうすれば世界中の本を暗記できますし、大人になったら通訳や翻訳の仕事で活躍できると思うんです」


「いやいや、本当に、これは素晴らしい能力だ。素敵です」


微笑みながら褒め称える三日月堂に茜は照れたのか、顔を赤くさせて俯いた。


「でぇ~、お嬢ちゃんの変態趣味はなんだい?」


デリカシーの欠片も持ち合わせていない花巻が訊くと、千田がわざとらしく咳払いをする。


しかし花巻は咳払いの意味を理解していない様子であった。


やはり千田を無視する。


「私の新しい趣味は……」


そう言いながらも話したがらない茜が口を閉じた。


花巻以外は察する。


あまり口に出来ない趣味なのだろう。


特に古株の異能者たちには良く理解できていた。


そもそも自分の変態趣味を朝富士のように、堂々とカミングアウト出来る異能者は少ないのだ。





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