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変態超能力をプレゼントDX  作者: ヒィッツカラルド
36/61

36・願ってもいなかったチャンス《神回》

帰り道。


「ねぇ、月美――」


「なぁに、龍~ちゃん?」


暫く歩いてから龍一が月美に質問した。


二人は住宅街に入っていた。


辺りは暗く、電信柱に設置された街灯が夜道を淡く照らし出している。


「月美はいつから超能力を?」


「先週ぐらいかな」


「透視能力なんだ……」


「うん」


朦朧とした意識の中、膝枕で介抱されていた龍一は、それを朧気に聞いていた。


正直なところ月美が異能者に成っていたことに予想外の驚きを感じている。


「生きているもの以外を透かして見ることができるの。人間の体内や背中の向こう側は見えないわ。あと成長を続けている植物の裏側も透視できないの」


「凄い超能力だね。僕もそんな能力が欲しかったな……」


龍一が俯きながら言った。正直な意見である。


「龍~ちゃんの超能力も凄いと思うよ。ちょっとグロいけど……」


「確かにグロテスクだな。それに悪趣味だ……」


「あの超能力、嫌い?」


唇のないミイラの怪物が記憶の中に浮かび上がった。


「できれば、もっとシンプルでいいから超能力らしい能力が欲しかったかな。サイコキネシスとか……」


「昔っから龍~ちゃん、そういうのが好きだったもんね」


「それにしても月美がパンドラ爺婆に超能力を貰っていたとは思わなかったよ」


「私は龍~ちゃんがパンドラ爺婆に超能力をプレゼントされたって聞いた時は、凄く嬉しかったよ」


異能者は異能者としか恋に落ちない。愛さない。その言葉が龍一の脳裏に過ぎる。


横を見てみると月美の頬がピンク色に染まっていた。照れている様子だ。


龍一もなんだか照れくさくなった。


二人の会話が止まる。


歩いていると隣り合わせに建ち並ぶ二人の家が見えてきた。


「ねぇ、龍~ちゃん。質問してもいいかな?」


「なに?」


「龍~ちゃんの超能力は、大体分かってきたけどさ。やっぱり龍~ちゃんの新たな趣味ってさ……」


「ぅ………」


パンツである。


月美も薄々気付いているだろう。


龍一は女性物のパンティーに異常な性癖を感じている。


そわそわする龍一。


もじもじする月美。


もう二人は家の前に到着していた。


月美が小声で言った。


「やっぱり、パンツ……。だよね……」


龍一も小声で吃りながら答えた。


「パ、パ、パンツと言うば、パンツですが……。な、何か問題でも……」


二人の顔が真っ赤に染まっていた。初々しく照れている。


「やっぱり中毒みたいな感じでさ、生パンツを見ないと辛いのかな?」


生じゃなくてもいいし発作もない。


いや、若い息吹が満タンになれば生理的理由で発作が起きるのかもしれない。


爆発するかもしれない。


たまには自家発電したりガス抜きをしなければならないだろう。


健康的な青少年のように――。


それが若さの代償である。


「つぅきぃ~みぃ……」


龍一の声は震えていた。


「龍~ちゃんは、私の新しい趣味ってなんだと思う?」


月美の新しい趣味?


唐突に訊かれて我に返る龍一。


そういえば月美の新しい趣味とはなんだろうと考えた。


それは間違いなく変態趣味なのだが、月美は龍一に隠し事をしたくなかったのだ。


異能者は異能者にしか恋しないという条件が月美の乙女心に拍車をかけている。


薄々と暴走の予感が龍一を襲う。


「月美の新しい趣味って、なに?」


どのような変態趣味だろうか――。


龍一の好奇心を否応なしにも煽りあげた。


月美が、消え去りそうな小声で言った。


「チ○コ比べ、なの……」


「ぶッ!!!」


思わず吹いていた。


吹いて仕舞うほど驚いた。


もじもじしながら月美の告白が続く。


「ほら、超能力で服とか透かして見えるでしょ。だからどんな男性も全裸に見えるの。それで、いけないとはわかっていても、ついつい見比べちゃうのよ……」


月美は横を向いて龍一に顔すら見せないで語る。


全身をもじもじさせて耳が真っ赤なのだけが分かる。


苦笑いながら言う龍一。


「見比べちゃうんだ……」


「うん……」


「透けて見えるから……」


「うん……」


「チ○コを……」


「うん……」


「じゃあ、僕のも見たんだ……」


「うん……」


「誰かと比べたの……」


「平均よりやや大きめだったよ……」


ちょっと嬉しい回答だったが――。


「特に大きくなってからの形は、かなりカッコ良かったよ……」


嬉しいけど――。


「そんなところまで、見たんだ……」


「うん……」


言ってから龍一が、あることに気がついた。


そういえば二日連続で自家発電した。


月美の部屋は直ぐ隣。


それ即ち、透視能力を持つ幼馴染に全部見られていたことになる。


ライブで自家発電ショーを披露したことになる。


でも、念のため確認してみる。


万が一ってこともあるだろう。


希望は有る。


奇跡を願いながら龍一が訊いた。


「じゃあ、夜の秘め事も……」


「二日連続で鑑賞しました……」


ガクン!


龍一の膝が崩れた。


そして両手をアスファルトに着く。


奇跡なんて有る筈がない。


真実は残酷なものである。


龍一の顔色が絶望に白く変わる。


体に受けた物理的ダメージのせいでない。


今受けたばかりの精神的ダメージの為だ。


「おわった……」


「龍~ちゃん……」


「月美に全部見られていたなんて……。恥ずかしさのあまりに死にたくなってきた……」


「龍~ちゃん、元気出して……。とても素敵だったよ」


月美が慰めるが元気の欠片も出てこない。


四つんばいで絶望に暮れる龍一の前に、月美がしゃがみこんだ。


「龍~ちゃんばかり恥ずかしい思いしているなんて、かわいそうだよね。私のもちょっとだけ、見せてあげる。パ、パンツ……を」


「ぬぬぅ!」


龍一が凄い形相で顔だけ上げる。


するとしゃがみこんでいる月美の両膝が目の前に見えた。


手を伸ばせば触れる距離。


薄暗い向こうに神秘が潜んでいた。


「つ、月美……」


「私だって恥ずかしいんだからね……」


月美が震える両手でスカートを僅かに捲り上げると同時に、両膝が少しずつ左右に開いて行く。


女の子がおしっこをするポーズだ。


日が暮れ辺りは暗い。


龍一が凝視する向こうも残念ながら暗い。


闇が疎ましい。夜が憎らしい。


龍一の体がじわりと前ににじり寄る。


膝と膝の奥に薄っすらと浮かび上がる青白い絹影。


おそらくは水色のパンティー。


「ぬぬぬぬぬぅぅ!」


しゃがみ込む少女の前で四足歩行の獣が迫り寄っているようだった。


龍一の息が荒くなりつつあった。


見えそうで見えない!


でも、もう少しで見える!


月美は赤面しながら瞼を強く瞑っていた。


龍一のほうは両眼が血走っている。


その言葉は唐突だった。


月美が言う。


「さ、触っても、いいよ……」


ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!


声にならない声で驚く龍一。


心中内に絶叫の嵐が不意荒れる。


驚きのあまり眼が飛び出しそうだった。


アメリカのアニメみたいに口からも心臓が飛び出しそうであった。


龍一は呼吸を整え直してから尋ね直す。


「マジですか……?」


「マジですよ……」


触らせてくれる。


生パンツを――。


触らせてくれる。


今、穿いているパンツを――。


これは夢でない。


願ってもいなかったチャンス。


チャンス!


ちゃんす!


Chance!


そうだ、願ってもいなかったチャンスだ。


躊躇いを抱きながらも龍一の右手がアスファルトから離れた。


僅かに開放された月美の両膝の間を目指す。


その手が震えていた。


震えを止められないし、それどころでない。


胸がドキドキする。


心臓が爆発しそうだ。


心の奥底の若輩な煩悩がマグマの如く温度を上昇させていく。


興奮のあまり訳が分からなくなっていた。


一度月美の表情を確認しようと視線を上げると月美は目を瞑ったまま横を向いていた。


必死に恥ずかしさを我慢しているのが分かる。


その我慢する乙女の表情が龍一の思春期を煽り立てた。


鼻血が垂れた。


ぽたぽたと―――。


龍一は、それすら気にならない。


否。鼻血に気付いていない。


それだけ幼馴染の股間に集中しているのだろう。


震えながら進む龍一の右手が月美の膝前を通過すると、何にも触れていないのに暖かさを感じる。


空間の空気が人肌の温もりを孕んでいるのだ。


これは月美の産み出した温もり。


乙女の体温。


それが龍一の扇情を誘うが、ここは野外であり住宅街。


我が家の前だ。


躊躇も残る。


「いいんだよ、龍~ちゃん。私は覚悟できているからさ……」


ズキューーーーーーーーン!!!


健気。健気である。


たまらないほど健気である。


健気に感謝である。


健気万歳!


「わ、わかった……」


躊躇が薄らぎ一気に勇気が湧き上がった。


だが勇気満点まで達していない。


龍一の右手は恐る恐るゆっくり進む。


まるでスリルを堪能するかのようだった。


龍一の喉がゴクリと鳴った。


月美の頬を汗が一滴流れて顎から雫となって落ちる。


その雫が龍一の右手にポタリと落ちた。


ドキッとした。


一瞬動きが止まったが、直ぐに進行を再開する。


こんなところで止められない。


もう少しで触れる。


月美のあそこに――。


月美が穿いているパンツに、じかに触れる。


あと数ミリで――。


あと僅か――。


その刹那――。


「あんたたち、こんなところで何しているの?」


「「ひぃ!!!」」


突然声を掛けられ驚く二人が敏捷に立ち上がった。


龍一が振り返るとレディーススーツに肩からショルダーバッグを下げた姉の虎子が立っていた。


どうやら仕事から帰って来たところらしい。


「なぁ、にゃぁんてぇもないょぉ!」


返事をする龍一の声は奇怪な程に裏返っていた。


全身の毛穴が開いて汗が水鉄砲みたいに噴出している。


「じゃぁああぁわわぁ、りゅぅぅぅぅううちゃん、おやすみぃぃぃいなさそい。とぉぉらね~ちゅあんも、おやすみぃぃぃいなそい!」


「おやすみ……なそい?」


しどろもぞろの月美が噛みまくる。


ドーバー海峡を横断できる程に目が泳いでいた。


虎子が首を傾げる中、月美は猛ダッシュで自分の家に飛び込んで行く。


逃げたのだ。


そのあと月美の家の中から派手な音が何度か聴こえてきた。


「なによ、あれ……」


虎子が呆然としている隙に龍一も家に逃げ込む。


階段を三段飛ばしで駆け上がると二階の自室に姿を隠す。


「龍~のやつ……、鼻血出てなかった?」


頭を描く虎子も、訳の分からないまま玄関をくぐり家に入った。


龍一にとって激しいまでの一日が、こうして終えようとしていた。


後は夕食を食べて風呂に入って寝るだけだ。


暫くは自家発電を禁止する積りだ。


そして、また明日が始まる――。


変態たちの物語は明日に続く。





よろしければブックマーク登録よろしくお願いします。

私もテンションが上がりますから( *´艸`)

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