アザレア1
中谷雪奈視点「アザレア」開始です。
誰しも生きていたら、誰かに恋をしたり、誰かのことをちょっと良いなーって感じるものだと思う。それで告白したり、付き合っちゃったりとかするんだと思う。
その人達とあたしの違いは、自分の気持ちを素直に伝える勇気の有無。
「雪奈、昼休みもうすぐ終わる」
徐に目を開けると、とてつもない美人の顔がすぐ傍にあった。
とてつもない美人、なんて、もう少し詩的な形容の仕方が無かったものかと疑われるだろうが、事実、この鳴海要という女は、誰もが羨むとてつもない美人なのだ。
「……寝起きに鳴海さんの顔見るとか、目に優しくないや」
「失礼だな」
わざとらしく目を抑えたあたしを見て、要がクスッと笑う。
あたしが手を伸ばすと、要は立ち上がって、腕を引いてくれた。その動作は、まるでダンスでリードされるかのように思われた。
「あたし、鳴海さんが男だったら絶対告ってたなー」
「……っ、またその話?」
柔和な笑みでポーカーフェイスを気取っているが、一瞬だけ、彼女の眉間に皺が寄ったのをあたしは決して見逃さなかった。
「いや、鳴海さんだって、女のあたしに告られてもキモいっしょ?」
流れるような黒髪を耳に掛けると、要はそっとあたしの手を離す。
「……そうね」
語彙力に欠けるけど、あたしはなかなか最低な人間だと思う。
要が傷付くと解っていながら、こんな言動をとるのだから。でも、そうすることでしかあたしは満たされない。
要があたしを「そういう意味で好き」なことに気付くのに、時間はかからなかった。
1番最初に頭を過った感想と言えば、「マジかー」だった。
だってあたしは別に美人でもないし、勉強も運動も平凡な成績しか残していないし、要の友達として、ただ一緒にいて、何気ない会話をしてきただけだし。
比べて要はまず顔が綺麗だし、首席で入学した上、今までの定期テストでは学年1位を守り続けているし、中学では陸上部でいろんな大会に出場して優勝していたらしいし、陸上以外のスポーツも何でも出来るし、性格も良い。イケメンの彼氏もいる。あと、意外と面白いし、よく笑う。
要はあたしの持っていない素敵なものをいっぱい持っているけど、あたしは彼女に好きになってもらえるようなものなんて何も持っていない。
(……きっついなー)
彼女の好意を知りながら、彼女を暗に拒絶するような言動をとるのは、なんて心が痛いのだろう。
けれど、結局何とも思っていない相手を傷付けるのは、ただ心が痛いだけだ。
傷付けた分、謝りたいだとか、何かしてあげたいだとか、そんな感情が要に対して一切浮かばないのだ。
それでも要を手放さないのは、あたしが愛されることの喜びと優越感を知ってしまったから。
自分の傲慢さに、反吐が出る。
「次って現国だっけー? 睡眠時間だね」
「中間、泣きついてきても助けないから」
離された要の手を再び握り、いつものように笑いかける。
要も何でもないことのように笑みを浮かべた。掴んだ手から、彼女の脈が速まるのが解った。