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「スカイディアへ」  作者: プレG
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第3話 兎の村へ

物音に怯えながらも振り向いた先にいたもの。


全く理解できなかったが、何事かを話しかけてきて、傷付いた自分の足を見てからぱったりと動かなくなった生き物。


それは、人間に「よく似た」生き物だった。


「よく似た」といったのは、明確に違いがあったから。


二足歩行をするフォルムではあるが、手足の先、肘から先と膝から下は毛で覆われている。


刺繍の入ったチロリアンシャツみたいなものに、ベスト、短パンという、いかにもな恰好をしていて、身体つきからそれが少女であると判断する。


やや口と鼻が前に出ていて、何より頭には兎のような長い耳がついていた。


そう、兎だった。


今まで何度となく見てきた「獣人(兎ベース)」だった。


ゲーム、マンガ、小説、映画等、色んなジャンルで何度となく登場し、竜人にとっては最早珍しくもない存在ではあるのだが、目の前にいられると、さすがに感じるものがあった。


「わぉ、ファンタジー。」と思わず声が出て、思わずちょっと笑う。


こんなタイミング、こんな場所でなければ、凄腕が特殊メイクを施したコスプレイヤーかな?と思う程の出来映えだ。


よく見ると、太ももがザックリと切れて、血を流している。


どうやら、さっきの熊もどきに襲われていたんだろう。


その傷を見ながら、我ながらちょっと早い気もするが、努めて冷静になろうとする。


目の前にはおそらくは放っておけば死ぬであろう兎っ子。


自分にも襲い掛かってきた熊もどきに襲われ、気を失う前には何らかのコミュニケーションを取ろうとしていた、自分にとって危険が少なそうな兎っ子。


(助けてやってくれんかのぅ。)

言われなくたって、何とか救ってあげたい、と思うものの、竜人には他者の傷を癒すような能力はなかった。


一先ず自分の着ていたTシャツを脱いで破り、包帯のように少女の足に巻いていく。


血は止まっておらず、すぐにTシャツ包帯は赤くなっていく。


動かない少女を抱き上げ、木々を越えるように空へと浮かび上がる。


上半身は裸で、下はスウェット、裸足という恰好の自分が動かない兎っ子少女を抱きかかえて空を飛んでいる。


(こりゃあ、なんともファンタジーな事案発生だぁ…)などと思いつつ、上空から集落のようなものがないかを探す。


上空から見ると、思った以上に森は広かった。


正に、「見渡す限り」といった広大な森の上空を、螺旋状に下を見ながら飛んでいく。


5分ほどで、森の中に若干開けた場所を見つけ、高度を落として近づいていく。


突然襲われたら目も当てられないので、一旦様子を伺ってみると、どうやら少女と同じ、兎っぽい獣人が住む村のようだった。


村人たちは、村の中を忙しく動き回り、何を言ってるのかは分からないものの、大声で指示を出す者、指示を受け、弓矢を持って村の入口に向かう者、防護柵を作る者などが見て取れた。


村まで50メートルほどのところに着地し、村の入口へと向かう。


戦闘準備をしているようにしか見えない村人たちに、ちょっと不安を覚えつつも、少女の傷が心配なので、村へ急ぐ。


一応、自分の接近を伝えるために「おーい、おーい!」と声を発しながら進むと、案の定、弓矢を構えた村人がこちらに気が付き、こちらを警戒しつつも村の中へ何事かを叫んでいた。


10人程が集まって村の入口を堅め、こちらを注視していたが、どうやら抱きかかえられている少女に気付いたようで、一瞬の驚きののち、警戒の気配が一段と強くなる。


あまり刺激をしてもいけないと思い、その場に少女を寝かせ置き、一旦10メートルほど下がる。


ほかの村人に比べ、明らかに強そうな男が出てきて、少女の姿を確認し、まだ存命であることと、どうやら治療を施そうとしていることを見て取る。


(う~ん、よく鍛えられた、精悍な顔つきの、、、ウサギだな。)


そんなことを思いながら見ていると、その精悍なウサギ男は、入口そばの男たちに何事かを男が叫ぶ。


入口に待機していた男の中から一人の若めな兎が出てきて、少女を抱えて村の中へと早足で入っていった。


(無事に助かってくれると良いなぁ…)などと考えつつ、未だ警戒を解いていないウサギ男に敵意が無いことを伝える手段も考えてみる。


(一旦、座ってみたらどうかね?)

確かに、ちょっと疲れてもいるし、座らせてもらおうかな…


その場にゆっくりと座りながら、そういえばさっきから俺は誰と話してるんだろうと不思議に思い始める。


(どなたですか~?)と頭の中で問いかけると、(「おぉ、もうワシの存在を受け入れてしまったか!」)と、ちょっと驚いたような声が聞こえ、続けて(「ワシの名はキース、「スカイディアへ」を書き残し、オヌシをこの世界に招いた者じゃよ。」)との声が。

信じられないような、信じたくないような、分からなかったことが分かって安心なような、突っ込みどころ満載の声が聞こえてきた。


信じる以外に選択肢はないであろうその言葉を聞き、体力的には問題はなかったものの、極度の緊張と理解を大きく超えた環境変化からのストレスという精神的疲労で、知らぬ間に限界を迎えていた竜人は、最後の力を振り絞ってそれを受け入れて、意識を手放した。

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