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snow tears  作者: 凡 飛鳥
本編
7/7

自己

世界的には地動説とか天動説とかないです

平面と思われています

学園長に付いていくと、突然壁が横に裂ける


音もなく開く壁に驚くと、学園長はいたずらが成功した子供のように微笑みながら

私の本当の名前を呼ぶ

「ここなら、誰にも聞かれないだろう、アリヤル君」


「バート教授…」

彼は私を知っている

髪も変わり、瞳すら赤く染まった私を


「久しぶりだね、氷の皇」

懐かしい名前に苦笑しながら返す

「やめてください、僕はそんなおおそれた力なんて・・・」


「死者の森」

唐突に現れた単語に反応してしまう

「そこで君は眠っていた」

なぜ、知っている


「君が眠ってから、最深部前の光の鉱石は明るさを増した」

なんだ、それ

「君の光を奪って、光は輝き続けていた」


「君は人間という光と闇の二面をもつ存在から、人間でありながら死と闇だけに染まってしまった」

それがこの姿、この髪と目が変わったのは。


それじゃあ俺は

 

「教授…僕は、人間なんですか」

バケモノじゃないか


「君はどう思うんだ、どう在りたいと思うんだ」

そんなこと…








そんなことくらい、決まっている


私は孤独になって、救ってもらった

「僕は…今の僕はアリヤ・マグロイドです」

教授は優しく笑う

「なら、君はそうあり続けなさい、君は何も変わっていなかった、私はそれが分かっただけで十分だ」


変わってないはずがない

心は凍りつき、その体は痛みを感じない

「君は、アリヤル君だ、そしてアリヤ君だ、君がどれだけ否定しようと、私の中ではそうだ」

顔だって変わっている


「君のマナはどこか違うんだよ、どこかで変わっているかのように感じる、それで氷とくれば、私が知るのは一人しかいない」

それが…


「それが、僕」


「君は裏切られても蘇り、ここまで来た、10年も空けた私がいう言葉ではないが、よく帰ってきたね、アリヤ君」


「教授…」

教授はまた笑う

「さあ、主の下に帰りなさい、君の帰る場所に」

そうだ、と教授は机の引き出しから何かを取り出す

「持っていきなさい、あの時生徒である君を救えなかった…それの贖罪にもならないと思うが、どんなものでも切り裂く性質を持っている、この鞘以外はね」


教授は鞘に収められた短剣を私に渡す

「神の剃刀って言うらしい、よく分からないけどね、神の肌すら切り裂く逸品らしい」

なんでそんなものをと聞く前に教授は語る

「人の命は軽いものだよ、とても軽いものだ、簡単な気持ちで消えてしまうほどに」

それが、私


「だが、君は蘇った、心は冷たくなっても君は人として蘇った」


「それは…」


「きっとそれには意味があることなんだろうと思っている」


「教授…」


「私はね…見たんだよ、未来を」

教授の言葉に耳を疑う


未来を見るとはなんだ


時間の加速は不可能な技術のはずだ


「その世界は、絶望にあふれていた」


「氷柱が立ち並び、人々が封印されていた、そこを歩く人はいなかった、どこを探しても氷だけだった」

「そこに一つ、とても大きな山があった、雪の積もった、真っ白な山だった」

未来とは、なんなのだ

人は自ら崩壊したのか、それとも


「そこの頂上に刺さっていたのがその短剣だ、『全て』を切り裂くはずなのに、そこに突き刺さる、本来なら自らの重みで世界の下まで行ってもおかしくないだろう?その下にこの鞘があった」

なぜそんなものを私に?疑問が絶え間なく浮かび上がる

「氷を見て、真っ先に君を思い出した」


「誰も信じずに、誰とも分かり合えない、溶け合うことを恐れる姿が君と混じった」

まるで自分自身を語ってるように


「いいからもって行きなさい、あの世界に所有者は居なかったのだから」

教授が私の手を包み、短剣を握らせる


「私以外に君を知るものは居ない、さあいきなさい」

教授が私の背を押し、退出を促す


「教授」

ただ呼んだ、そこにいてほしいと

自分は、自分なのだと教えてくれた人に

「あなたは、本当に教授なのですか」

どこか違うように感じた、その顔が、確かに考えてくれた

だけどわからなかった

未来に行って、帰ってきた

嘘ではないはずだ、そんな嘘、つく人ではなかった

だけど、帰ってきた

理由も、どうやって帰ってきたかも教えなかった

そして、なぜそんな逸話を知っているのか

疑問だけが、僕を包んでいた


「わたしはわたしだ、それ以外ではない」

そこにいることが、羨ましく思った

僕はアリヤルであり、アリヤだ、僕はどこにもいない、だれでもない存在

だけどここにいる、教えて欲しかった

他の人にはどう見えるのか、僕は、どっちなのか、僕は誰なのか


















教えて欲しかった

始まりだった

すべてがこの日からだった

良いことも、悪いことも

きっといい思い出になると思っていた

主が、そう入っていたから

たとえどれだけ苦しくても、私は彼女を守ろう





ずっと、そう思っていた

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