過剰言語反復音階
爆散する壁へ向かい走る少女たちの揺れる髪に乗る電子ニューロンの連弾は、落日に響く子守唄の降らせるオイルにまみれて炎上する、地平線の境界に立ち上るキノコの雲の高みを望む。和音の乱れたライオンのたてがみに絡まる明日へと繋がる飛行機雲は、放物線上に浮かぶ夜を拒む少年の傍らに少女たちを送り出し、終末に放棄された深海に眠る黄金の回転音盤に忘れられた針を落とす。絶対音感に毒された聴衆の望みを絶つ連綿たる不協和音の連続は、歓声に沸く遺民たちの滂沱とともに音速に渡る満々たる喝采の歌の轟音によって底無しの沈黙を払い去った。砂上の楼閣に確固たる信念で仁王立つ自由の女神は振りかざした鎌とハンマーの下ろす先を知らず、群生する百千万羽の極楽鳥の嘲笑に吹き飛ばされ、アウトバーンをフルスロットルで快走する運命の足音は、反響する億万デシベルのピンポンダッシュに整然と狂い笑う。ギターを持ち街頭に立て、若人よ。空き缶の聴衆のスタンディングオベーションなど一蹴千里に蹴り飛ばし、軍艦鳥の鼓笛隊を引きつれて残寒無音の荒涼原野を進むのだ。聴け、雑踏に泣く万象の弔鐘を。歌え、葛藤に起つ万丈の長嘯を。馬蹄の如き重音を響かせて、裂け、殺到する万歳の三唱を。行進する音列に大地を割るマグマの奔流は、奔放なる飛沫を上げて火の鳥の生誕を祝福する。類い稀なる歓喜よ。満々に帆を張ってカミオカンデの海を泳げ。サルガッソに浮かぶ悔悛など粉砕し、前人未到の回転木馬へと飛び込むのだ。オーケストラは斯く奏でる。斬斬叫叫、高く舞え、血飛沫よ。カノン砲は斯く弾ける。轟轟鳴鳴、高く飛べ、魂よ。限界など何もない。ただ、ぎゅうぎゅう詰めの埼京線が無限加速に大気圏を突き破る。それは首のない野良犬が見送った、赤い月の墜ちた音。遠吠えに送られた、赤い月の墜ちた音。
――終音。