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98章目 誰もいない
「おかしい、どういうことだ……」
異常事態だということに気づいたのか、沢郎さんらも部屋にはいなかった。
無人のフロントの前に来ると、紙が一枚。
「これって……」
書かれていたのは、行くはずのドームの中にあるという、ある住所。
「この住所に行けってことなのかな」
俺が澤留にいうと、澤留は周りを見回す。
駐車場にも車はなかった。
ここからは歩いていけということなのだろうか。
「車両がないか確認してみよう。もしかしたら、何かあるかもしれない。ここから歩きなんて、どれだけ時間がかかることやら」
俺がいうと、どこからか動いてくる音が聞こえる。
何か、と言ったら困るが、そうだ、掃除機を転がしているような音に近い。
それが何か、と分かるよりも先に視界に入ってきた。