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97章目 おかしい
翌朝、澤留は珍しく先に起きていて、トイレへと入っていた。
出てくると、俺は起きていてベッドに座っていた。
「珍しいこともあるもんだな」
「何さ」
澤留は言いつつも、いつものように肩甲骨まで届く長い髪を、赤色の紐で結える。
「気分は大丈夫なのか」
「ええ、すっかり良くなったわ」
澤留は調子が良さそうだ。
ただ、何か引っかかる。
「何かおかしくないか」
そう言って、部屋の外を見る。
窓の向こうには、ドームの景色が広がっている。
「何かって、何」
「いや、なんだかなって」
ふと駐車場を見る。
車が一台も止まっていない。
「おい、やっぱりおかしいぞ」
車がすっかりないということは、沢郎さんらもいないということかもしれない。
大慌てで着替えさせ、沢郎さんの部屋へと向かった。