87章目 フロッピーのデータ
「読み込みを完了します。権利者、アナムネーシス・スーザン・スミス。確定しました、スーザン本人のものと確定します」
デニスさんには、電話をしない限り声が聞こえることはない。
自動音声のような無表情な声で、エリーゼが話し出す。
「世界は、すでに獣が解き放たれた。7つの角は鋭くとがり、そのために己を貫くだろう。証はすでに明かされた。未来は4(よん)に集約される。基礎を理解せよ。基礎を理解せよ。基礎を理解せよ。さすれば生命は知識を得る」
まったく意味が分からない。
それどころか、謎は深まるばかりだ。
「これで、何がわかるっていうんだろうね」
澤留が言いたかった言葉を言ってくれた。
「スーザンのこのデータファイルには、さらに続きがあります。続けてもいいですか」
「どうぞ」
俺がエリーゼへと伝えると、ありがとうございますと言って、続きを話してくれる。
「深淵は、しかし無限ではない。ソコには箱がある。幸せな者がその箱を開けることだろう。それは、不幸も含むが、あとには幸せが来る。センターは常に私だ。二人は今どこにいる。この書を見る人へと伝えたい。二人に会ったら知らせてくれ。私は今も幸せだ、と」
少なくても、スーザンは都市伝説に出てくるような人ではないようだ。
一人の人間として、これを書いているときに何を考えていたのか。
それは、きっと、寂しさなのだろう。