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73章目 古今東西都市伝説集
「これが一番最古の資料になります」
司書さんが、手袋をはめてよれよれになった本を持ってくる。
「閲覧には手袋をお願いしております」
「はいはい」
沢朗さんが白っぽい手袋を付けている。
同じところには、たくさん同じものがあった。
俺らもそれを付けてから、本に触れる。
出版の日付は今から70年前、これがスーザンが載っている最古の資料だという。
表題は、古今東西都市伝説集といったところか。
「70年しか経っていないのに、こんなにボロボロになるんですか」
「ええ、残念ながら、植民初期のころは、ほとんどのものが質が悪く、すでにチリとなったものも多くあります。居住空間だけは、それでもかなり頑丈に作られていますが」
第一段階から第三段階まで、多くの建物があったそうだ。
それでもなお建ち続けているのは、人類がまだまだ増えているからだろう。
「スーザンの下りは、こちらになります」
司書さんは、親切にも、もしかしたらできるだけ触れて欲しくなかっただけかもしれないが、ページを開けてくれた。