61章目 フロッピー
「それで……」
俺はいまだ彼女がスーザンだとは信じていない。
だが、澤留は何か直感か何かで分かっているようだ。
「それでスーザン」
俺の言葉とかぶせるようにして、澤留がスーザンに尋ねる。
「貴方はどうしてここに来たの」
「あら、これを渡すためよ」
それは、黒い四角い板だった。
「フロッピーディスクでしたっけ」
それを見て、俺はスーザンに声をかける。
「あら、よく知ってるわね。私がこれを使っていた時には、もう知らないっていう人が多数だったのに」
そもそも、ライトメイヤーから前きいた話が真実だとすれば、スーザンが産まれたころには、すでに使っていなかったはずだ。
博物館にでも収蔵されていてもおかしくないほどの骨董品である。
とすると、スーザンの年齢がますますわからなくなる。
あの写真とも、何か違うような感じがあった。
「これをアナムネーシスに見せて、あとはつなげてもらえれば、続きを知ることができるわ。私が彼らと別れた後の話をね」
はい、とスーザンは無造作にフロッピーを渡してきた。
「それじゃ」
本当にそれだけだったらしく、部屋からあっという間にいなくなる。
「ちょっと待って……」
パタンとドアが閉まった直後に開け、他にも聞きたいことがあるからと思って部屋の外へと飛び出す。
だが、すでにスーザンはそこにはいなかった。