6章目 エリーゼの話
1週間後、先生が頼んでくれた部品が届き、さっそく受け取った。
それを持って家に帰り、沢朗さんたちの前で部品を取り付けた。
「さあ、話してごらん」
俺がエリーゼの中のマザボ部分に、音声用のチップをはんだで固定してから、スイッチを入れる。
「たすkていただいてありがとうございます。型番号:8-01-3020、AS-0011、CL-9810です」
「固有名は」
「消去されています」
「じゃあ、君の名前はエリーゼだ。いいね」
「わかりました。エリーゼ、名前として固定します」
電子音がしばらくして、再び話し始めた。
「少し聞きますが、ライトメイヤーさんはどこに」
「あの伝説の3人を知っているのか」
俺は聞いた。
「伝説?そんなはずはないですよ。だって、あの人たちはこちらに逃げてきたんですから」
「え」
沢朗さんが、驚いてエリーゼに聞いた。
「逃げてきたって、どういうことだ」
「文字通りです。私は、こちらで作られたのでわかりませんが、公楽さんとライトメイヤーさんとスーザンさんの3人は、地球にいられなくなったため、こちらに来たと、何度も話しておられました」
「どういうことだ、歴史はそんなことを言ってないぞ」
「歴史がすべてではないということですね」
澤留がぼそっと言った。
それは意に介さずに、エリーゼは続ける。
「かの3人は、それから火星上の様々な場所へ旅をし、ついには定住をすることになります。私は旅をしている最中に作られました。なので、記憶はそれ以降のものとなるはずでありますが、かなり分断されています」
「別に封印されているというわけじゃないだろ。話せる範囲でいいから、話してくれないか」
沢朗さんは聞いたが、話すためには3人すべての許可がいるといって、エリーゼは譲らなかった。
結局、その話は、この時には聞くことはできなかった。