56章目 宿の部屋
「君らは同じ部屋でいいかな」
沢朗さんが俺らに声をかける。
「はい、大丈夫です」
澤留が俺が答えるよりも先にこたえる。
別に恥ずかしいわけじゃないが、女子と一緒の部屋というのは何か緊張する。
「大丈夫です」
でも、俺もそう答えざるを得なかった。
「ふぅ」
部屋の中に荷物を置くなり、澤留がベッドに腰掛ける。
ぎしぎしときしむベッドは、かなり古いようだ。
使いまわしもいいところという感じで、スプリングも弱い。
「でも、どこにいるんだろうね」
「誰が」
荷物を確認して、金庫に入れている俺をしり目に、ベッドに横たわる澤留。
「ライトメイヤーさん。エリーゼは今はバギーにいるけど、エリーゼがどういう風に次は変わるんだろうって、なんだか気になっちゃうんだよなぁ」
「そうだね、でも、会えるかどうかわからないからなぁ」
俺は金庫の番号を覚え、鍵をかけた。
ここは2重ロックになっていて、物理的な鍵と、タッチパネルに入力する5ケタの任意の暗号の両方が必要になっているようだ。
さらに安全を求めるなら、指紋センサーもいるだろうが、3重ロックなんて、研究所や金持ちぐらいしかもっていないだろう。
「会えるかもよ」
澤留が声をかけてきた。
そう考えるのが、一番だろう。
「だな」
俺はそう答え、同じベッドで澤留のすぐ横に腰掛けた。