16章目 連絡手段
地上では、バギーにライトメイヤーを乗せている澤留がいた。
「もう、やっときた」
澤留が怒っているが、差と言っても、たかが2分ほどだ。
もしかしたら1分かもしれない。
「行くか」
バギーを前にして、沢朗さんが言った。
みんながバギーに乗るのは狭かったが、どうにか乗ることができた。
いくつかの荷物をトランクに入れ直し、ライトメイヤーが入れるようにスペースを作った。
「みんな、シートベルトは締められたか」
「大丈夫です」
俺が沢朗さんに答える。
運転は沢朗さん、助手席には嬉子さん、後部座席に澤留と俺とライトメイヤーが座る。
「よし、では出発だ」
ギアを入れ、アクセルをゆっくりと踏み込むと、バギーはその踏み込みに従って走り出した。
数分間、砂をはじいているカンカンという軽い音だけが聞こえていた。
「そういえば、ライトメイヤーさん、出ていく直前に触っていた装置、アレで何していたんですか」
俺が気になっていたことを聞いた。
「ああ、二人に合図を送っていたんだ」
「合図?」
「ああ、誰一人として、二人を除いて誰一人として気付くはずがない方法でな」
ライトメイヤーは、自慢しているような表情になっている。
「どうやったんですか」
沢朗さんがライトメイヤーに聞く。
「電波だよ」
「電波?」
俺が思わず聞いた。
触っていた装置は、電源装置のような物で、電波を出すような物ではない。
「送電線を伝う中に、信号をまぎれさせたんだ。二人がどこにいても、必ず分かるはずだ。どこへ向かうか分からないが、バギーで砂漠をさまよっているってな」
「…さまよってはいませんよ。次の目的地は、すぐ隣にある郊外施設になります。飛び石状にあるから次々と渡り歩くうちに、次のドームへ辿り付けれるってわけですよ」
「そうか、ならいいんだ」
ライトメイヤーは、目をつむり、次の目的地につくまで寝ると言って、いびきをかき始めた。