14章目 アナムネーシス
「これが本当だとして、あのロボットは…」
沢朗さんが、ライトメイヤーに聞く。
「ここにいるだろ」
ライトメイヤーが指差したのは、エリーゼだった。
「エリーゼが、あの時のロボット…」
「エリーゼと呼んでいるのか。いや、お前の名前はエリーゼではない」
そういって、ライトメイヤーが、エリーゼのそばに立膝ついて座った。
「お前の名前は、アナムネーシス。それが、お前の本当の名前だ。俺たちが付けた名前だ」
「アナムネーシス…」
エリーゼがぼんやりと繰り返す。
「なんか長いや。やっぱりエリーゼで」
そこに、澤留が言ってきた。
「いい場面に水差すなよ」
俺は小声で澤留に言った。
「どちらでも、読んでください。私には違いないので」
「じゃあ、エリーゼと呼ばせてもらうからね」
澤留が、同じような声で言った。
「ライトメイヤーさんは、どうしてエリーゼを作ったんですか」
近くの部屋に案内されると、明らかにここで生活をしているかのような感じだった。
そこにあった椅子に座りながら、俺はライトメイヤーに聞いた。
「自分が生きたっていう証を作りたかったのさ。3人でな」
「生きた証?」
澤留がライトメイヤーに尋ねる。
「ああ、俺たちが、ここにいたんだっていう証拠みたいなものだな。それが、エリーゼなんだ。きっと、作りながら聞いていた「エリーゼの為に」をどこかで覚えていたんだろうな」
「そうだったんですか…」
澤朗さんが静かに言った。
「そういえば、この世界の今について、教えてくれるか。どうなっているんだ」
ライトメイヤーに言われるままに、今の火星世界についての説明をした。