131章目 AI
「“ゆえに”君らは今いるところが嘘か真かわからなくなった。今の状況といえば、そんなところだろう」
好楽が俺らに話し続ける。
「あんたらは何者だ。それにこの世界は、結局なんなんだ」
俺が聞くと、はっきりと答えてくれた。
「ここは仮想空間上に展開されている実験施設だ。君らはそこで演じているキャラクターの一人に過ぎなかった。だが、今や世界を疑うほどに目的と乖離してしまった」
「目的って?」
「地球が人類が住めなくなる環境になるということがわかったのは数十年前。当時から数百年以内に地球は隕石によって文明の維持すらも危ういほどに地表面もろとも破壊される。その際、安全とされた場所は火星だった。人類がテラフォーミングし、火星を母星とするまでには小惑星がぶつかるほどの年月がかかる。そこであらかじめ複数の可能性を測るため、ここにその可能性の一つを提示することとした。今君らがおるのはそのうちの一つの世界に過ぎん。君らはそこで動き回り、人類が存続していると仮定した状態で、生き続けることができるかどうかのAIだ」
それも本当かを確かめるすべはない。
AIだとすれば、この世界の外側にあるという現実世界へと行くことはできないはずだからだ。