123章目 ゆっくり
「アナムネーシス、何のつもりだ」
ライトメイヤーが、エリーゼへと問いかけるのが聞こえる。
目の前がかすんでいたのが、一気に覚醒して、まるで長い間寝ていたのから一瞬で目が覚めたかのような感じだ。
「間違えてる、貴方たちは、間違えてる」
「何が間違えているというんだ。アナムネーシスも分かっているだろ。時は満ちて、今や人類は火星で各ドームの中とは言え繁栄をしている。もう地球から何か物資を運んでくるということもない。今、この瞬間に、地球のやつらをやらなければ、いったい、いつその攻撃の命令を行うというんだ」
「それはいつでもない、今じゃない、未来でもない」
俺はようやく、よろよろと近くの機械の壁にもたれつつも立ち上がった。
「いつの日にか地球に行けることを、俺は楽しみにしている。だから、その楽しみを奪うようなことをしないでほしい」
「はっ、3か月前に攻撃を加えるときにはそんなこと言ってなかっただろ。それに、もう攻撃を加えちまったんだから、こちらがどうこうしようがどうしようもないぜ」
公楽が面白半分に言う。
「この計画の全ての鍵は、人にも匹敵していて、この装置全部を操ることができるエリーゼだ。このエリーゼが拒否しているのであれば、どうあがいても計画は実行できない。そうだろ」
俺がいうが、彼らはどうせそんなことも考えているだろう。
案の定というべきか、ライトメイヤーが合図をしてスーザンをエリーゼの裏側へ回らせて、何かのスイッチを押させた。