117章目 同じ間取り
思いついた策はすぐにしてみる。
考えついたのは、エルゴへ向かうときに通ったような建物を探すことだった。
どこのドームからもいけるようになっているはず、という仮説の元の動きではあるが、どうやら本当だったらしい。
「もう行くしかないね」
「そうだな」
澤留に言われなくても選択肢がないことはわかっている。
むしろ、それを言われると絶望の度合いが増したようにも感じた。
その家は、前にエルゴへ入った時と全く同じ作りをしている。
実際のところ、火星のドームではこういうことは珍しくない。
作るのを簡略化するために同じ設計で動くことが多々あるためだ。
だが、それも同じ国のドーム内のこと。
北米条約連合や欧州連盟といった日本皇国以外の国のドームで見たのと全く同じということは滅多にあることではない。
「同じ作りだったら……」
玄関に入り、見据えるのは真正面にある扉。
澤留がノブを回してみるが、まったく動く気配はない。
「どちらにせよ怒られるなら、こうしてやろう」
俺は、澤留を脇へと退かせ、ドアを右足で蹴り飛ばす。
勢いよくノブが吹き飛び、どこかへと、つまりは目の前の巨大階段へと扉ごと落ち込んでいった。
「いくぞ」
「やっぱりカッコいいよ」
「知ってる」
澤留に言われながら、階段を降り始めつつ、さっさと言葉を返した。