116章目 放送
「……何か聞こえた?」
「うん、でも、何の音?」
思わず澤留にも確認する。
澤留も聞こえていたとなれば、きっと幻聴じゃない。
でも放送が何かはまだはっきりとしない。
でも、そのうちにはっきりとするようになってきて、それが何かの音楽だとわかる。
「音楽?」
少しして、その曲名を思い出す。
「エリーゼのために……」
その時、俺の頭の中で何かがカチリとハマる感覚があった。
「エリーゼ、エリーゼ。なんで忘れていたんだろう」
誰かの最後の抵抗なのかもしれないこの音楽。
慌てて沢郎さんのところへ行こうとすると、急に別の割り込み放送が入る。
「緊急放送、緊急放送。ミサイルが接近しています。全住民は、今すぐ指定の避難所へ向かってください。緊急……」
初めてのことばかりだ。
緊急放送となれば全員が一斉に指定された行動をしなければならない。
だが、人っ子一人、正確には俺と澤留以外は道に出てこなかった。
「ねぇ、やっぱりおかしいよ」
「ああ、絶対におかしい」
だが、何をすればいいかがわからない。
そこでふと思い出した。
「澤留、エルゴて確か、全ドームに繋がっているていう話だったな」
「ここからもいけるて思ってる?」
「まさしくそのとおり」
俺が答えると澤留もその可能性を考える。
どこにいくべきか。
そして、どこから繋がっているのか。