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【連載版】可愛げがないと言われ続けた令嬢ですが、有能だと気づいてくれた人と婚約しました   作者: ピラビタ
可愛げがないと言われた令嬢

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8/22

変わらない距離で

 婚約したからといって、世界が劇的に変わるわけではなかった。


 朝はいつも通り官庁へ向かい、

 机に向かい、資料を読み、数字を整理する。


 ただ一つ違うのは――

 隣にいる人が、明確に「隣人」になったことだ。


「ここ、表現が曖昧です」


 私は、資料の一部を指で示す。


「“柔軟に対応”では、現場裁量が広すぎます」

「では、範囲指定を追加しましょう」


 レイン様は即座に修正案を書き込む。


 このやり取りも、婚約前と何も変わらない。


 それが、少し不思議で――

 そして、心地よかった。


 ***


「婚約したのに、緊張しませんか」


 昼休み、そんなことを聞かれた。


 言ったのは、同僚の女性官僚だ。


「緊張、ですか」

「もっと距離が近くなるとか……」


 私は少し考えた。


「距離は、元からこのくらいでしたので」

「……なるほど」


 彼女は、どこか納得したように笑った。


「不思議な関係ですね」

「そうかもしれません」


 けれど、私は知っている。


 無理に感情を盛り上げなくても、

 信頼は、静かに積み重なるものだということを。


 ***


 夕方。


 業務が一区切りついたところで、彼が言った。


「今日は、ここまでにしましょう」

「珍しいですね」


「疲労が見えます」

「……自覚はありませんでした」


「では、尚更です」


 そう言って、彼は私の書類をまとめる。


 その仕草は自然で、

 気遣いを誇示するものではなかった。


「婚約者として、過保護ではありませんか」

「必要な配慮です」


 淡々とした返答。


 でも――

 その一言に、胸の奥が少しだけ温かくなる。


 婚約したから特別になるのではない。

 元から大切にされていたのだ。


 それに、ようやく気づいただけ。

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