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【連載版】可愛げがないと言われ続けた令嬢ですが、有能だと気づいてくれた人と婚約しました   作者: ピラビタ
可愛げがないと言われた令嬢

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7/22

正式な婚約

 正式な婚約の発表は、静かに行われた。


 大広間でも、舞踏会でもない。

 王府の会議室で、関係者立ち会いのもと、淡々と書類が交わされる。


「マリエル・ノートン」


 呼ばれて、一歩前に出る。


「アレクシス・レイン」


 彼も同じように、名を呼ばれる。


「両名の婚約を、ここに認める」


 それだけだった。


 拍手も、祝辞もない。

 だが、胸の奥で確かに何かが決まった。


 ***


 その日の午後。


「正式に、婚約が成立しました」


 レイン様は、いつも通りの調子で言った。


「……実感がありません」

「そのうち出ます」


「そうでしょうか」

「不便が出たら、調整します」


 相変わらずだ。


 でも――


「婚約者として、不都合はありませんか」


 彼が、珍しくそう尋ねた。


「今のところは」

「“今のところ”?」


「仕事と立場が変わらないので」


 彼は、少しだけ考えた。


「変えますか」

「……いえ」


 私は首を振った。


「変えなくていいです」


 この距離が、心地いい。


 ***


 発表の効果は、すぐに現れた。


「ノートン子爵令嬢、改めてご挨拶を」

「今後とも、ぜひ」


 今まで無視していた官僚たちが、揃って頭を下げる。


 その中に――


「おめでとうございます」


 ラドフォード男爵もいた。


「……ありがとうございます」


 彼は、以前のような余裕を失っていた。


「あなたは、良い選択をなさった」

「そうでしょうか」


 私は、静かに言った。


「私は、何も変えていません」


 彼は、言葉を失った。


 ***


 実家からも、知らせが届いた。


『婚約、おめでとう』

『お前が誇らしい』


 父の筆跡は、どこか硬い。


 それでも――

 認められたのだと、思えた。


 義母からの一文は、短かった。


『体に気をつけて』


 それで、十分だった。


 ***


 夕方。


 庁舎を出ると、彼が待っていた。


「一応、聞いておきます」


 彼は、真正面から私を見た。


「後悔は?」

「ありません」


 即答だった。


「可愛げがない、と言われ続けた私を」

「はい」


「対等だと言ってくれた」


 彼は、少しだけ目を細めた。


「事実です」


 それだけだった。


 でも――


「婚約者として」

「?」


「今後とも、よろしくお願いします」


 そう言って、彼は手を差し出した。


 一瞬、迷ってから。


「こちらこそ」


 私は、その手を取った。


 可愛げがない。

 そう言われ続けた私が、選ばれたわけではない。


 並んだのだ。


 これからも、彼の隣で。

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