表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】可愛げがないと言われ続けた令嬢ですが、有能だと気づいてくれた人と婚約しました   作者: ピラビタ
可愛げがないと言われた令嬢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

不在を狙う者たち

 動きは、予想より早かった。


 第三段階承認から、わずか二日後。

 王府に、正式な異議申立書が提出された。


「地方貴族連盟、ですか」


 書類に目を通しながら、私は静かに呟く。


「名目は、改革による地域経済への悪影響」

「実際は?」


 部下が、言葉を濁した。


「……利権の維持でしょう」


 予想通りだった。


 レイン様が前線に立っていた頃、彼らは動かなかった。

 いや、動けなかった。


 今なら――と思ったのだろう。


「対応期限は」


「三日以内です」


 短い。


 こちらに、準備する時間を与えないつもりだ。


「分かりました」


 私は、書類を閉じた。


「こちらから、公開説明会を設定します」


「説明会、ですか?」


「ええ。非公開での交渉はしません」


 逃げ道を、最初から塞ぐ。


 ***


 その日の午後、別の報告が入った。


「ノートン子爵家に、問い合わせが殺到しています」

「内容は」


「縁談の件、です」


 やはり来たか。


「レイン殿が療養中である以上、婚約は白紙ではないか、と」


 私は、ほんの一瞬だけ目を閉じた。


 これは、政治ではない。

 私個人を揺さぶるための動きだ。


「対応は?」


「ご実家は、判断を保留しています」


 父の性格を考えれば、当然だった。


 状況が不安定な時に、前に出る人ではない。


「こちらから、声明を出します」


「マリエル様ご本人が?」


「はい」


 迷いはなかった。


 ***


 公開説明会は、王府の大広間で行われた。


 地方貴族、官僚、商会代表。

 そして、野次馬に近い見物人。


 中央の席に、私は一人で立った。


 隣にいるはずの人は、いない。


 けれど。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」


 声は、通った。


「本改革案について、いくつか誤解があるようですので」


 資料を掲げる。


「まず申し上げます。

 この改革は、地方を切り捨てるものではありません」


 反論は、すぐに飛んだ。


「だが短期的な税負担は増える!」

「貴族の裁量権を奪う気か!」


 私は、遮らない。


 全て、聞く。


 そして。


「順にお答えします」


 一つずつ、数字で潰す。


 過去の失敗事例。

 改革後の中期回復曲線。

 他国での成功例。


 感情論は、入り込む隙がなかった。


「……以上です」


 広間は、静まり返った。


 最後に、私は言った。


「この改革は、レイン殿個人のものではありません」

「王府の決定であり」

「そして、私が責任を持って遂行します」


 視線が、集まる。


 逃げない。


「不在を理由に揺らぐ計画なら、最初から成立していません」


 誰も、反論できなかった。


 ***


 その夜、私は自室で、もう一つの文書に署名した。


 ――婚約に関する声明。


 内容は、簡潔だった。


 レインとの婚約は、双方の意思によるものであり、

 療養の有無に関わらず、継続の意思に変わりはない。


 封を閉じ、机に置く。


 少しだけ、手が震えた。


 けれど、それを止める理由はなかった。


 可愛げがない。

 そう言われるなら、それでいい。


 今、必要なのは――

 曖昧さを排した、意思表示だ。


 私は、灯りを消した。


 不在を狙う者たちは、きっと次も動く。


 だが、もう分かっている。


 私は、一人でも立てる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ