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可愛げがないと言われ続けた令嬢ですが、有能だと気づいてくれた人と婚約しました   作者: ピラビタ


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可愛げがないと評された令嬢は、静かに席を外された

『可愛げがないと言われ続けた令嬢ですが、有能だと気づいてくれた人と婚約しました』

を連載向けに再構成した作品です。

短編をお読みでない方も、1話からお楽しみいただけます。

「……マリエル、あなたは本当に可愛げがないわね」


 その言葉を、私は何度聞いただろう。


 今日もまた、王都の社交サロンの片隅で、そう囁かれた。


 私はマリエル・ノートン。

 地方子爵家の娘であり、現在は王府行政局に勤める補佐官でもある。


 ――もっとも、その肩書きは、ここでは好意的に受け取られない。


「頭はいいけれど、面白みがない」

「笑顔が固いのよ」

「社交の場に向いていないわね」


 紅茶を口にしながら、令嬢たちは楽しげに噂話を続ける。

 私は相槌も打たず、ただ静かに聞いていた。


 否定しても意味がない。

 彼女たちが求めているのは、事実ではなく“雰囲気”なのだから。


「ねえ、マリエル。例の中央案件、補佐に入っているんでしょう?」


 唐突に話題を振られる。


「はい」

「すごいじゃない。でも……」


 一瞬の間。


「あなた、人前に出る役じゃないわよね」


 笑顔で言われたその言葉は、

 はっきりとした線引きだった。


 ――裏方。

 ――目立たない役。

 ――評価されない立場。


 私は軽く頭を下げた。


「自覚しております」


 その返答が、また“可愛げがない”のだと知りながら。


 社交会が終わり、馬車に乗り込むと、父がぽつりと言った。


「マリエル」

「はい」

「お前は、優秀だ。だがな……」


 続く言葉は、予想できた。


「もう少し、柔らかくなれ」


 父は責めているわけではない。

 本気で、そう思っているのだ。


「中央でも、そろそろ人事を動かすらしい」

「そうですか」


「次の大きな案件から、お前は外れるだろう」


 それは、決定事項だった。


「代わりはいくらでもいる。だが、お前の将来を思えば――」


「理解しております」


 私はそう答えた。

 感情は、声に乗せなかった。


 家でも、社交界でも、職場でも。

 私の評価は、同じだった。


 可愛げがないが、有能。

 ――だから、前には出さない。


 その夜、行政局の廊下を歩きながら、私は通達書を手に取った。


 次期中央政策案件

 補佐官名簿――


 そこに、私の名前はなかった。


「問題ない、か……」


 小さく息を吐く。


 誰も困らない。

 誰も気づかない。


 ――そう、思っているのだろう。


 でも。


 私は知っている。

 この案件が、どれほど綱渡りかを。


 そして。


 それを一番理解している人間が、

 この名簿には、もういないということを。

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