8.初めてのコラボ
『アルテミス・エンターテイメント』の威信をかけたコラボ配信が始まった。
配信タイトルは**『異次元の知力対決!咲良vs輝夜ルナ・真剣麻雀勝負!人生相談添え』**。
同時接続者数は急上昇し、両チャンネルのファンが押し寄せた結果、あっという間に5万を超え、さらに伸び続けていた。
「それでは、始めましょうか、輝夜ルナさん。手加減はいたしませんので、本気でいらしてくださいね」
画面の中の咲良は、いつものように優雅に微笑んでいる。
緊迫の麻雀対局と神業の読み
対局が進行する。東一局。
ルナが会心の配牌から、素早く役を作り上げ、中盤に「リーチ」をかけた。
コメント:「ルナちゃん親リーきたー!」
コメント:「咲良ちゃん、逃げて! ルナちゃんの攻撃力はガチ!」
コメント:「この局面で麻雀談義できる咲良ちゃん、やばい」
しかし、咲良は涼しい顔で、全プレイヤーの捨て牌、ツモのスピード、指先の動き、そしてこれまでの全配信データから得たルナの打ち筋の傾向までを解析する。
咲子はルナの当たり牌を完璧に避けながら、静かに自分の手牌を育てた。
そして、ルナがツモってきた牌を危険と判断し、一瞬だけ指が止まる。そのわずか0.5秒の逡巡を見逃さず、咲子は即座にツモ切りをした。
「あら、残念。それは危険牌ではありませんよ」
ルナがその牌を切ると、すぐに咲良が「ロン!」を宣言した。
「タンヤオ・ドラ3、裏ドラ1。12000点です。危ない手でしたね。ルナさんが迷った牌は、私の待ちではありませんでした」
視聴者コメント
コメント:「ええええええええええ!?」
コメント:「なんでルナちゃんが迷った牌が分かった? 心理戦かよ!」
コメント:「咲良ちゃん、牌じゃなくて脳内を見てるだろ」
コメント:「麻雀AIより正確な確率計算と読みだわ」
コメント:「18歳(自称)の打ち筋じゃない」
ルナは驚きを隠せない。 「ええっ!? なんで私の待ちが分かったんですか!?
しかも、私があの牌を危険だと思って迷ったことまで……
咲良ちゃん、もしかして、私の脳内まで透視してるんですか!?」
咲子はにこやかに返す。
「ふふ、私はオフラインだと倍の強さですよ。
牌の動きと、指先の迷いは、時として言葉よりも雄弁なのよ」
「麻雀は**『人』を読むゲームですから。特に、ルナさんのような繊細な打ち手**は、感情が牌に乗る傾向がありますね」
休憩時間、トップVTuberの抱える虚無
その後も咲良の圧倒的な実力は続き、ルナは失点を重ねる。
休憩時間に入り、両者がチャット欄の質問に応じる形でトークを始めた。ルナは咲良に圧倒されたショックからか、ふと本音を漏らした。
輝夜ルナ:「咲良ちゃんは、配信で何がしたいですか? 私、最近はちょっと……何を頑張ればいいのか、わからなくなっちゃう時があるんですよね」
「VTuberとして人気も増えて来たし、登録者も増えた。だけど、この先、何を目標にしたらいいのか……」
視聴者コメント
コメント:「「ルナちゃん、珍しく弱音吐いてる?」
コメント:「伸びてるからこその悩みかもな」
コメント:「咲良ちゃんの相談タイムキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
コメント:「この空気、ガチのやつだ」
ルナは無理に明るく笑ったが、その声には、どこか空虚な響きが混じっていた。
咲良は麻雀の解説を中断し、真剣な眼差しでルナに語りかけた。
「ルナさん、麻雀でもね、役満(最高役)を上がった後が肝心なのよ。最高の瞬間を味わった後で、次の一歩を踏み出す勇気を持つこと。それが一番難しいけれど、一番大切なことなの」
コメント:「深い…」
コメント:「役満の後の虚無感ね。分かるわ」
コメント:「この切り返し、まさに人生相談の達人」
コメント:「この人、本当に18歳? 言葉に重みがありすぎる」
「役満を上がってしまえば、もうそれ以上はない。でも、役満を上がったその手で、次の局の配牌をまた一から組み直すでしょ? それが人生というものよ。『次の一歩』こそが、新しい目標になるのです」
ルナはハッと息を飲む。
「咲良ちゃん……今の、すごく刺さりました。
私、**『アガリっぱなし』**で安心しようとしてたのかもしれない」
咲良は静かに話を続けた。
「それにね、ルナさん。目標は、自分ひとりのためでなくてもいい。誰かの役に立つことが、新しい目標になることもあります。ルナさんの配信で、救われている人がたくさんいるのですから」
視聴者コメント
コメント:「涙出てきた」
コメント:「トップVTuberに、次の目標はリスナーって言われると響く」
コメント:「咲良師匠、最高の助言ありがとうございます」
配信は再開され、麻雀対局に戻る。ルナは咲良のアドバイスに触発されたのか、一瞬だけ目に鋭い光を宿し、猛攻を仕掛けた。しかし、咲良の知恵と経験はそれを上回る。
最終的に咲良が圧勝し、配信は大成功に終わった。
配信終了後。ルナは咲良に深々と頭を下げた。
「咲良さん、今日は本当にありがとうございました。
麻雀も、そして……休憩中の言葉も、私の宝物にします」
ルナの瞳には、まだ迷いと疲れの色が残っている。
咲子は、ルナの悩みが麻雀の勝敗よりも根深く、簡単に解決できないものだと理解していた。
「また、いつでもお話ししましょうね、ルナさん。
人生というゲームは、時に**『全てを捨てて振り出しに戻る勇気』**が必要なこともあるのですから」
咲良は、後の**「人生相談コラボ配信」**で、この若きトップVTuberの抱える悩みに本格的に向き合うことになる予感を抱きながら、静かにスタジオを後にした。




