6.初めてのコラボ依頼
VTuber業界で圧倒的なシェアを誇る大手事務所**『アルテミス・エンターテイメント』**。
その役員会議室には、所属VTuberの華やかなポスターとは裏腹に、緊張した空気が漂っていた。
「これが、直近の話題を独占している個人勢、咲良ちゃんのデータです」
マーケティング部門責任者の吉田が、中央の大型モニターに咲良ちゃんの配信実績を表示させた。グラフは、驚異的な伸びを示している。
「麻雀配信と歌枠を経て、彼女のチャンネル登録者数は爆発的に増加。
特に**『18歳なのに演歌がプロ級』『麻雀で確率を断言する記憶力』**という異質なギャップが、Toitterのトレンドを連日賑わせています」
CEOの藤堂は、コーヒーを飲みながらデータを見つめる。確かにこの伸びは異常だ。
登録者1000人から数日で10倍以上になっている。
個人vtuverなど登録者1.2桁がほとんどだというのに
「興味深い。我々の主力ライバーは『可愛い』や『ゲームスキル』が軸だが、彼女は『知性』と『人生経験の深さ』で勝負している。ジャンルが違いすぎるが、それが逆にトレンド性を生んでいる」
「はい。彼女のリスナー層は、既存のVTuberファンに加え、麻雀ファン、ビジネスマン、さらには人生経験豊富な層まで、異常なほど広範です。これは業界全体が渇望していた新しい層です」
常務の川村が口を開いた。
「しかし、設定年齢の矛盾が指摘されている。そのリスクを承知で、手を組むのか?」
「リスクではありません。トレンドの源泉です」と吉田は断言した。
「ファンは既に『彼女がただ者ではない』ことを楽しんでいます。
問題は、この巨大なブームが、彼女の個人チャンネルだけで消費されていること。この流れを、我々の事務所に引き込むべきです」
CEO藤堂は決断した。 「わかった。彼女の『話題性』と『トレンド性』を、事務所全体のブーストに利用する。
即座に、我々のトップライバーとのコラボレーションを打診しろ。目的は、咲良ちゃんの持つ熱狂的な注目度を、我々の配信プラットフォームとライバーに流入させることだ」
「承知いたしました。彼女の配信プラットフォームのアドレスを確認し、すぐにメールを送ります」
コラボ打診
数日後。咲良ちゃんの配信終了後、彼女の管理用メールアドレスに一通のメールが届いた。
送り主は『アルテミス・エンターテイメント』の事業開発部。
内容は、咲良ちゃんの活躍を称賛しつつ、同社の人気VTuberとの「知力・経験値対決コラボ配信」を打診するというものだった。
件名:【アルテミス・エンターテイメント】咲良様とのコラボレーション企画のご提案
咲良様の驚異的なご活躍、特に麻雀における超人的な読みと歌枠での圧倒的な表現力に、弊社一同深く感銘を受けております。
この度、弊社では、咲良様が持つ**『知性と深さ』**という新しいトレンドを、より多くの視聴者に届けるためのコラボレーションを企画したく存じます。
つきましては、弊社所属のトップVTuber**『輝夜ルナ』との「異色対談&麻雀対決」**をご提案させていただけないでしょうか。
企画意図としては、**『現役JKの知識と、人生経験の深さを持つとされる咲良ちゃんの、ハイレベルな知力対決』**として、世間の注目を一気に集めたいと考えております。
もちろん、配信技術と環境は弊社が完全にサポートいたします。
咲子はメールを読みながら、ふわりと笑みを浮かべた。
(今度は、VTuber界の巨大な事務所ね。やはり、私の**『異質なトレンド』**は彼らの目には魅力的らしいわ)
彼女は、この打診の裏にある戦略を正確に理解していた。
(私の**『謎』と『話題性』**という波を使い、彼らの事務所のプラットフォームに乗り上げようとしている。私のリスナーだけでなく、外部の視聴者まで巻き込むつもりね)
しかし、咲子にとってこれは願ってもない機会だった。
(より多くの人に届く。そして、あの巨大事務所が仕掛けてくる『知力対決』は、きっと手強いお相手を用意しているはず。真剣勝負は望むところよ)
咲子は、キーボードに手を置き、すぐに返信した。
件名:Re: 【アルテミス・エンターテイメント】咲良様とのコラボレーション企画のご提案
ご提案ありがとうございます。 ぜひ、貴社の企画にお力添えさせていただきます。
輝夜ルナ様との対談、楽しみにしております。
麻雀については、私も一切手加減をいたしません。どうぞ、最高の環境と挑戦者をご用意くださいませ。
咲良
咲子の返信を受け取った『アルテミス・エンターテイメント』の会議室は、歓喜に沸いた。
「よし! このコラボで、我々は次のトレンドを掴む!」
こうして、VTuber界の巨人の**『戦略』と、
99年の知恵を持つ『謎の個人勢』**の思惑が交差した、世紀のコラボ企画が動き出したのだった。




