59.九十九歳の戦闘訓練(ワークアウト)――リングフィット・サバイバル
一期生との絆を深め、炎上という戦場すら制した咲良でしたが、佐藤家の日常には新たな問題が浮上していました。
「おばあ様、最近は大福の食べ過ぎですわ。少しは体を動かさないと、18歳の体とはいえ鈍ってしまいますよ」
みゆにそう諭され、用意されたのは最新のフィットネスゲーム**『リングフィット アドベンチャー』**でした。今夜の配信は、咲良が謎の輪っか(リングコン)を手に、困惑するところから始まります。
輪っかは「武器」ではありません
「皆様、今夜はこの不思議な円陣……いえ、運動器具を使って、心身を鍛錬いたしますわ。……みゆちゃん、これはどこから矢を放てばよろしいの?」
視聴者コメント
「弓じゃねえよww」
「いきなり殺意が高い」
「咲良ちゃん、それは『鍛える』ための道具だよ!」
ゲームが始まり、画面に魔物が現れると、咲良のスイッチが完全に入りました。
「敵の襲来ですわね! 全員、伏せなさい!」と叫びながら、彼女は独自の解釈でトレーニングを開始します。
スクワットは「狙撃回避」の動作
最初のメニューは「スクワット」。
画面上のキャラクターが走るために必要な動作ですが、咲良の脳内では別のシミュレーションが走っていました。
「スクワット……ふむ、なるほど。これは敵の狙撃を避けるための基本動作ですわね。腰を低く、頭の位置を一定にしないと、ジャングルの茂みから撃ち抜かれますわよ!」
「はい! 避けて! 次は右から来ますわ! 1、2、1、2!」
本来はゆったりとした筋トレのはずが、咲良の動きはキレッキレの「回避行動」に。
18歳の瑞々しい体のポテンシャルが、99年の戦時下を生き抜いた生存本能と共鳴し、凄まじいスピードで膝を屈伸させます。
視聴者コメント
コメント:「動きが速すぎて残像が見えるww」
コメント:「スクワットじゃなくて『タクティカル・ドッジ』になってる」
コメント:「負荷設定を最大にしてるのに、なんで息が切れてないんだ……」
リング押し込みは「白兵戦」
次に回ってきたのは、リングコンを腹筋で押し込む動作。
「これは……敵と組み合った際の押し出しですわね。皆様、いいですか? 腕の力だけでは足りません。丹田に力を込め、相手の重心を崩すイメージで……はぁぁぁぁっ!!」
バキッ、メキメキ……。
マイクが不穏な音を拾いました。
最新の強化プラスチックで作られたはずのリングコンが、咲良の「気合」によって見たこともない角度にしなっています。
「あら。この器具、少々造りが甘いようですわね? 佐藤代表、次はもっと頑丈な、鋼鉄製のものを用意してちょうだい」
視聴者コメント
コメント:「リングコンが悲鳴を上げてるww」
コメント:「鋼鉄製は草」
コメント:「18歳の皮を被った超戦士」
勝利のティータイム
開始からわずか15分。ゲーム内のボスは、咲良の放つ「殺気」と「超速スクワット」によって完膚なきまでに叩きのめされました。画面には『VICTORY!』の文字が。
「ふぅ……良い運動になりましたわ。かつての行軍に比べれば、お茶の子さいさいですわね」
涼しい顔で汗を拭う咲良。
しかし、背後のテレビ画面では、ゲームのインストラクター(リング)が心なしか震えているように見えました。
「2章:身バレと世界平和」まであと2日




