42.着ぐるみキャンプと「衝撃の二段構え」
櫻守フェスと、それに続く穏やかな雑談配信が終わり、世間が咲良の「知恵」に酔いしれていたある日の午後。
咲良のチャンネルで、突如として不可解な実写配信が始まりました。
画面に映し出されたのは、燦々と陽光が降り注ぐ、緑豊かなキャンプ場。
そして、その中央には……巨大な**「桜餅」**の着ぐるみを着て、もぞもぞと動く咲良の姿がありました。
「ぐぅ……皆様。今日は特別企画……夏の着ぐるみキャンプですわ……」
隣には「きつねうどん」と「たぬきそば」の着ぐるみを着た一期生ライバーたち。
焚き火を前に、巨大な桜餅がお茶を点てるというシュールすぎる光景に、チャット欄は爆速で流れます。
視聴者コメント
「VTuber……実写……着ぐるみ……情報量が多いww」
「桜餅が茶を点ててるwwww」
「きつねうどんが薪を割るなwwシュールすぎるだろ」
限界突破――現れた「変顔」
しかし、季節外れの着ぐるみと焚き火の熱は、過酷でした。
ついに咲良の限界が訪れます。
「……暑いですわ。このままでは、わたくしの餡子が煮えてしまいます。……皆様、失礼。少しだけ解放させていただきますわね」
そう言うと、咲良はためらうことなく、大きな桜餅の頭部をごそっと脱ぎ捨てました。
視聴者が「ついに素顔か!?」と息を呑んだ次の瞬間、現れたのは……。
目が左右に飛び出し、口がアヒルのように歪んだ、全力の「ひょっとこ変顔マスク」でした。
視聴者コメント
「ええええええええええええ!?!?!?」
「ひょっとこwwwwwww」
「素顔じゃないんかい!!wwww」
「待て、体は桜餅で、顔はひょっとこ……地獄の化身かよww」
「咲良ちゃん、笑いのセンスまで99年分蓄積してるのか!?」
「ふぅ……涼しゅうございますわ。皆様、どうなさいましたの? お顔が、わたくしのマスクのように歪んでいましてよ?」
ひょっとこのお面を被ったまま、咲良は優雅に茶碗を回し、ズズッとお茶をすすります。
その動作は完璧な作法なのですが、ビジュアルがそれを全て台無しにしていました。
狂気の中の「教え」
ひょっとこ顔の咲良は、焚き火を見つめながら、相変わらず深みのある声で語り始めます。
「人生とはね、このお面のようなものですわ。一枚めくれば、また別のお面がある。本当の自分なんてものは、案外、どこにもいないのかもしれませんわね……。大切なのは、今、どのお面で誰を笑わせているか。それだけですのよ」
視聴者コメント
「ひょっとこ顔で良いこと言うなwwww」
「説得力があるのかないのか分からんww」
「きつねうどん(一期生)が震えてるぞww」
「VTuberの概念を根底から破壊しにきてる」
「さあ、きつねうどんさん、たぬきそばさん。あなたたちも、その被り物の中は地獄のような暑さでしょう? 恥を捨てて、お脱ぎなさいな。わたくしが予備の『おかめ面』と『般若面』を貸して差し上げますわ」
「えっ、あ、はい……ありがとうございます……(泣)」
結局、配信の最後には、桜餅・うどん・そばの体を持った、**「ひょっとこ・おかめ・般若」**の三人が、焚き火を囲んで人生観を語り合うという、宗教画のような光景が完成しました。
この「変顔マスク実写回」は、咲良の底知れぬユーモアと、VTuberという枠組みを軽々と超えていく自由奔放さを象徴する、伝説の回として刻まれることになったのです。




