3.18歳とは思えない深み
配信画面には、緑色のマットが鮮やかな『オンライン麻雀・天鳳位戦』の対局画面が映し出されていた。
人生終盤の老人ホームで鍛えた腕に加え、天才的な記憶力で恐ろしい強さをを振るっていた。
咲子は東風戦のオーラス(最終局)、トップと僅差の2位という緊迫した場面で、チャット欄のお悩み相談に答えていた。
視聴者コメント(視聴者数:5人):
コメント:「初見です」
コメント:「麻雀できる18歳と聞いて」
コメント:「新人VTuberかな? 麻雀やるんだ」
「えーと、初見さんいらっしゃい。ゆっくりしていってね。次の相談は...『彼氏が私の話を全然聞いてくれません』ですね」
咲子はマウスを操りながら、穏やかな声で答える。
「それ、辛いわよね。でも男性って基本的に『解決思考』なの。あ、リーチが入ったわね」
画面上では、対面のプレイヤーから「リーチ」の声がかかる。
捨て牌には赤く光るドラも含まれており、振込めば一発で逆転負け必至の危険な状況だ。
視聴者がざわつく。
コメント: 「うわ、親リー(親のリーチ)だ」
コメント:「咲良ちゃん逃げて!」
コメント: 「これ一発で振り込んだらラス落ちあるよ」
しかし、咲子の脳内はスーパーコンピューターのように冷静だった。
「対面のリーチ宣言牌は6索。その前の手出しは2筒...。ここまでの全プレイヤーの捨て牌と、ドラの表示牌、全ての情報を照合するわ」
咲子の瞳が細められる。
彼女の脳裏には、過去の巡目で誰が何を切り、何秒迷ったかまでが完全に再生されていた。
「現在、見えている情報は全体の42%。対面の待ちとして考えられるスジは3通りあるけれど...場に3枚出ている4万の壁と、下家の安パイ合わせ打ちを考慮すると...」
「男性が話を聞かないのは、悪気があるわけじゃないの。彼らは問題を提示されると『どうやってこのリーチをかわすか』って脳が働いちゃってるだけなのよ」
咲子は迷わず、一見すると超危険牌に見える「5筒」を河に叩きつけた。
コメント:「うわあああ!」
コメント:「それ通すの!?」
コメント:「強気すぎる!」
コメント: 「なんで当たらないって分かるの?」
咲子は涼しい顔で解説する。
「今、5筒が当たる確率は計算上1.2%以下だったの。対面さんは3巡目に8筒を切ってるでしょ? あれが手出し(手の中から出した)だったから、5筒周辺の形はすでに整ってるか、持ってないかのどっちか。そして私の手牌にあるこの形からすると...」
早口で確率論を語りながら、咲子は相談に戻る。
「だからね、彼には『今はベタオリ(防御専念)の時間じゃなくて、ただ牌をツモる(話を聞く)だけでいいの』って、役割を指定してあげるのよ」
見事に危険牌をすり抜けながら、咲子は自分の手を進めていく。
次は仕事の悩みだ。 「『上司とうまくいかなくて...』という相談者さん。これ、麻雀の点数状況と似てるわね」
咲子は画面上の点数表示を指した。
「上司って、この『トップ目の親』みたいなものなの。守らなきゃいけないし、下からは突き上げられるし、常にプレッシャーを感じてるの」
「私のツモ番はあと3回。この手牌がテンパイ(あと1枚でアガリ)になる受け入れ枚数は残り7枚...。
山(積まれた牌)の残量から計算して、次でテンパイする確率は約28%。
でも、ここでこの牌を残せば46%まで跳ね上がる」
「だから、上司を攻略するには『安パイ(安全牌)』を提供して安心させてあげること。『お忙しい中すみません』って前置きをして、相手の警戒心を解いてから、具体的な解決策を打牌するの」
その瞬間、咲子の手が止まる。
「来た。有効牌。これでテンパイ。待ちは3面待ち。残り枚数は山に5枚生きている。勝てる」
「大切なのは『問題を持ち込む人』じゃなくて、自分の手で『解決策を手繰り寄せる人』になることよ」
咲子は静かに「リーチ」ボタンを押した。 同巡、対面が掴んだのは、咲子の当たり牌だった。
「ロン。メンタンピン、三色、ドラドラ。12000点です」
《WINNER》の文字と共に、咲子の大逆転勝利が決まる。コメント欄が爆発した。
コメント:「18歳が語る組織論と麻雀理論が深すぎる」
コメント:「読みが鋭すぎて怖い」
コメント:「1.2%のリスク計算を瞬時にやったの?」
コメント:「全部見えてるじゃん...」
コメント:「この打ち筋、歴何年のベテランだよw」
さらに家族関係の相談では、咲子の「お婆ちゃんの知恵」が炸裂した。
「『お母さんと喧嘩した』? ふふ、親子関係は配牌みたいなもの。
選べないけど、どう育てるかは自分次第よ」
「親ってね、子供に頼られると嬉しいの。
喧嘩して気まずい時は、変に謝るより『何か手伝うことある?』って鳴いて(アクションして)みて。これはコミュニケーションの『ポン』みたいなものね」
「謝る時は『私が悪かった』じゃなくて『心配かけてごめん』って言うのがコツ。
お母さんが恐れているのは、あなたがハコ点(持ち点ゼロ)になることじゃなくて、
あなたが麻雀(人生)を楽しめなくなることなんだから」
深い洞察と共に、咲子は次々と対局を制していく。
その打牌速度と正確さは、ネット麻雀の猛者たちを震え上がらせるレベルだった。
確率を支配し、相手の思考を読み、慈愛に満ちた言葉で視聴者を包み込む。
コメント:「咲良ちゃんの処理能力やばい」
コメント:「人生何周したらこんな鉄強になれるんだ」
コメント:「相談内容と局面がリンクしてて鳥肌」
コメント:「賢すぎるし強すぎる。麻雀界に激震走るぞ」
口コミで評判が広がり、同接数と登録者数が跳ね上がっていく。
「麻雀が強くて人生相談もできるJKがいる」という噂は瞬く間に拡散された。
ついに登録者数1000人を突破した。
「やったー!」 ヘッドセットを外し、咲子は素に戻って一人で喜んだ。
「こんなにたくさんの人が、私の麻雀とお話を見てくれるなんて!」
画面上の数字を見て、みゆちゃんも大喜びでメッセージを送ってくる。
「咲子ちゃん、すごいよ〜! 1000人だよ〜! しかも今の『地獄単騎待ち』でアガったの天才すぎない!?」
でも咲子はまだ満足していなかった。
99年の経験とこの記憶力があれば、もっとたくさんの人の役に立てるはずだ。
麻雀の点数計算よりも複雑な、人生という難局の乗り切り方を伝えていきたいと、咲子は強く思った。
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