19.おばあちゃんの知恵袋・マシュマロ100本ノック!
「皆様、こんばんは。本日は告知通り、皆様から寄せられた『マシュマロ』という名の心の声を、時間の許す限り拾い上げていきたいと思います。
……あら、すでに数千件も届いているのね。皆様、そんなに溜め込んでいらしたの?」
画面の中の咲良は、眼鏡をクイッと上げ(実況用の新アクセサリー)、気合十分といった様子だ。
視聴者コメント
「待ってました! 咲良師匠!」
「数千件w 現代人の闇が深い」
「眼鏡咲良ちゃん、知性の暴力感が増してて最高」
記念すべき1通目を読み上げた咲良の手が、一瞬止まった。
【マシュマロ1】
「湿ったチクワ」
視聴者コメント
「いきなり意味不明なの来たww」
「これどう返すんだよ」
「マシュマロの洗礼だな」
しかし、咲良は数秒の沈黙の後、慈愛に満ちた声で答えた。
「……なるほど。湿ったチクワ、ですか。皆様、チクワというのは本来、魚のすり身を棒に巻き付けて焼いた、江戸時代から続く伝統的な保存食です。それが『湿っている』ということは、焼き上がりの香ばしさを失い、ある種の**『停滞』や『孤独』**を表しているのかしら」
「でもね、湿度というのは、裏を返せば**『潤い』**なのよ。干からびて硬くなった心より、湿って柔らかくなった心の方が、新しい味(経験)を染み込ませやすい。……もしあなたが今、自分を『湿ったチクワ』だと感じているのなら、そのままおでんの出汁に飛び込みなさい。最高に美味しい『ちくわぶ』のような存在になれるわ」
視聴者コメント
「湿ったチクワで人生論を語るなww」
「おでんの出汁(社会)に飛び込めってことか……」
「雑学のねじ込み方がプロ」
続く100本ノック:ボケと真理の往復
その後も、咲良は流れるようなスピードでマシュマロを捌いていく。
【マシュマロ15】
「昨日、靴下を右から履くか左から履くかで1時間悩みました」
「あら、それは**『決定疲れ』ね。19世紀の哲学者ビュリダンのロバの話を知ってるかしら? 同じ距離にある二つの干し草の間で迷って餓死したロバのことよ。悩むくらいなら、明日は両足同時にジャンプして履きなさい**。運動不足も解消できて一石二鳥よ」
【マシュマロ42】
「将来が不安で夜も眠れません」
「不安というのはね、**『未来の自分への期待』**の裏返しなのよ。何も期待していなければ、不安すら起きない。眠れない夜は、羊を数えるのではなく、今まで自分が食べてきたお米の数を想像しなさい。日本人の勤勉さと大地の恵みに感謝しているうちに、思考が飽和して眠れるはずよ」
視聴者コメント
「両足同時www 転ぶだろw」
「『未来の自分への期待』……急に良いこと言うやん」
「お米の数は逆に目が冴えそう」
最後に届いた「本気」のメッセージ
配信開始から2時間。ついに100本目に差し掛かった時、咲良の表情がふっと和らいだ。
【マシュマロ100】
「咲良さんの言葉を聞いて、今日、会社に行く勇気が出ました。世界一になって、もっと多くの人を救ってください」
「……ありがとう。そうね、私が見据えているのは、単なる数字の頂点ではありません。私の言葉が、誰かの朝のコーヒーを少しだけ甘くしたり、重い靴を少しだけ軽くしたりする……そんな**『心のインフラ』**のような存在になりたいの」
咲良は画面を真っ直ぐに見つめ、力強く宣言した。
「100本ノック、完走いたしました。皆様のユーモアと苦悩、すべて私の『知性の糧』にさせていただきます。……さて、配信が終わったら、私も今日の夕食に『チクワ』を買いに行かなくてはね。もちろん、一番瑞々しいやつを」
視聴者コメント
「完走お疲れ様!」
「チクワ買いに行く咲良ちゃん想像して草」
「マジで世界一のVTuberになってくれ、ついていくわ」
「伝説のチクワ回として語り継ごう」
配信終了後、SNSでは「#湿ったチクワ」がトレンド入り。
咲良ちゃんの「知性とボケの二刀流」は、またしても新しいファン層を爆発的に増やしていくことになった。




