18.月夜の決意と新たなる一手
嵐のようなオフコラボが終わり、あおいの家を後にした咲子は、深夜、自分の屋敷の縁側で月を眺めていた。
手元には、あおいたちから教わった「SNS」の画面。そこには彼女たちとの思い出や、視聴者からの温かい、あるいは驚愕に満ちたコメントが絶え間なく流れている。
(ふふ……あおいちゃんに、カガミくん、サクラちゃん……。皆、あんなに小さな体で、必死に自分という存在を証明しようとしている。99年も生きてくると、世の中のことは大抵見知った気になっていたけれど、今の若者たちが抱える「孤独」や「迷い」は、私の生きた時代とはまた違う、鋭い痛みを持っているのね)
咲子は、膝の上に置いた自分の手を見つめた。
18歳の瑞々しい肌。
しかし、その内側にある魂は、数え切れないほどの別れと再会、そして知恵を蓄えてきた。
(神様が、私にこの「二度目の若さ」と「新しい舞台」を与えてくださった理由……。それは、ただ隠居して楽しむためではないはず。私がこれまでの人生で拾い集めてきた「言葉の薬」を、必要としている誰かに届けるためではないかしら)
咲子の瞳に、かつて一国の運命を左右する交渉に臨んだ時のような、鋭くも深い慈愛の光が宿る。
(決めましたわ。私は、この世界の頂――**『世界一のVTuber』**を目指します。有名になりたいわけではありません。より高く、より遠くへ私の声が届く場所へ行く。それが、今の時代で最も多くの人の心を救う道なのだから)
99年の人生経験を持つ少女は、静かに、しかし断固たる決意を固めた。
翌朝。咲良はさっそく行動を開始した。
次に必要なのは、視聴者とのより深い「一対一」の対話。
「さて、まずは皆様の心の奥底に眠る、本当の『声』を聞かせていただかなくてはね」
咲良はあおいから教わったばかりの指つきで、SNSを開き、一つのリンクを投稿した。
【告知】
皆様、いつも温かな応援をありがとうございます。
次回の配信では、皆様から寄せられたお悩みやご質問に、時間の許す限りお答えしていこうと思います。
題して、『咲良の知恵袋・マシュマロ100本ノック』。
どんなに小さなお悩みでも、誰にも言えない秘密でも、私が全力で受け止めます。
匿名ですので、どうぞ安心してお書きなさい。
[マシュマロのリンク]
皆様の「本音」、お待ちしております。
投稿ボタンを押した瞬間、通知の音が鳴り止まなくなった。
それは、世界一のVTuberへの第一歩であり、現代の迷える羊たちを救済するための、本格的な「人生相談」の幕開けだった。
次回、マシュマロ100本ノック回。
押し寄せる数多の相談に、咲良の知性がどう立ち向かうのか、楽しみにしていてください。




