10.雑談配信とドイツ語の衝撃
麻雀コラボ配信が大成功に終わり、咲良ちゃんのチャンネル登録者数はついに5万人を突破した。
その翌週、咲良ちゃんは久しぶりに「まったり雑談」配信を行った。
「皆様、こんばんは。先日のアルテミスさんとのコラボ、本当に楽しかったわね。ルナさんもとても素敵な方でした」
チャット欄は、咲良ちゃんの勝利を称賛するコメントや、ルナちゃんを気遣うコメントで溢れていた。
止まらない知識の泉
咲良ちゃんは、視聴者の質問に答えながら、いつものように幅広い知識を披露していく。
「咲良ちゃんは、どうしてそんなに麻雀が強いんですか?」
「麻雀は**『運』の要素が7割と言われるけれど、私は残りの『3割』を完璧に支配する**ことに集中しているの。
場の状況、残り枚数、対戦相手の癖……すべてを記憶し、確率論に基づいて最善の一手を打つ。確率を裏切る運の要素は、その時々で受け入れるしかないわね」
視聴者コメント
「麻雀の哲学が深すぎる」
「7:3の法則、覚えておこう」
「3割で勝率を極限まで上げるのね」
「咲良ちゃんの『美しさの秘訣』はなんですか?」
「秘訣なんて大したものはないけれど、**『姿勢』**は大切にしているわ。
背筋を伸ばして、呼吸を整えること。
これは、戦前の日本舞踊の師範が言っていたことよ。
美しい姿勢は、心の余裕から生まれるものですから」
視聴者コメント
「『戦前の日本舞踊の師範』!?」
「出た、知識のタイムスリップ!」
「美の秘訣まで昭和の達人かよ」
「咲良ちゃんの立ち振る舞いが優雅なのはそういうことか」
「最近のニュースで気になることは?」
「そうね、最近の欧州情勢については、少し心配しているわ。
特にユーロ圏の経済。各国の政策協調の難しさが、麻雀の多面待ちみたいに複雑に絡み合っている。**『大局観』**を持つことが、解決への近道だと思うけれど」
視聴者コメント
「突然の国際情勢」
「欧州経済を麻雀の多面待ちに例えるなw」
「知識の幅が広すぎて怖い」
「外交官説、マジで濃厚だろ」
ドイツ語の衝撃
配信も終盤に差し掛かった頃、チャット欄に一つ、異質なコメントが流れた。
そのコメントは、完全にドイツ語で書かれていた。
視聴者コメント (ドイツ語)
「こんにちは、咲良さん。大学の勉強で大きな問題を抱えています。失敗するのが怖くて、孤独を感じています。何かアドバイスをいただけますか?(Müller)」
チャット欄が一瞬静まり返る。日本語のコメントがほとんどの中、異国の言語での長文相談に、視聴者は戸惑った。
視聴者コメント
「え、何語?」
「ドイツ語だろ」
「誰か翻訳してあげて!」
「咲良ちゃん、読めるの?」
咲良は、そのコメントを見て、一瞬だけ瞳を細めた。そして、穏やかな笑みを浮かべる。
「あら、ドイツ語でのご相談、ありがとうございます。読んでいますよ」
咲良は、流暢で、かつ非常に洗練された発音のドイツ語で、話し始めた。
「ミュラーさん、ご質問ありがとうございます(ドイツ語)」
視聴者コメント
「!?!?!?!」
「ネイティブじゃん!?」
「発音が綺麗すぎる。本物だ」
「ドイツ語までペラペラなの!?」
「この人、一体何人なんだ…」
咲良は、相談内容を丁寧に確認しながら、優しく語りかけた。
「あなたは失敗を恐れているのですね。人生において、失敗は成功の反対ではなく、その一部なのよ
(ドイツ語)」
そして、比喩を交えつつ、的確なアドバイスを送った。
「ボードゲームのようなイメージで考えてみて。悪い手札を引いたとしても、諦める必要はありません。ただ、手を一から組み直し、小さな一歩を踏み出して、次のチャンスを掴めばいいのです(ドイツ語)」
「あなたの知性を信じて、前に進みなさい。あなたの学業と人生における成功を心から願っています(ドイツ語)」
完璧なドイツ語での、暖かくも的確な人生相談。
視聴者はただただ圧倒され、コメント欄は驚嘆の嵐となった。
視聴者コメント
「鳥肌が立った。言葉の壁すら存在しないのか」
「知識、経験、語学力。全部のスペックがおかしい」
「外交官説が確定しただろこれ」
「咲良ちゃんの『人生のリーチ』は回避不能」
配信は、ドイツ語のコメント主からの感謝の言葉に、咲良が優しく「Auf Wiedersehen (さようなら)」と応じて締めくくられた。
咲良ちゃんの「18歳の美少女VTuber」という設定は、その驚異的な知識と経験、そして多言語対応能力によって、ますます深く、解き明かせない謎として視聴者の心に刻まれたのだった。




