「私が君を愛することはない」「フザけるな!」 ――スパーン! 「ぶべら!?」
「クリスティーン、最初にこれだけは言っておく。――私が君を愛することはない」
「フザけるな!」
――スパーン!
「ぶべら!?」
辺境伯であるアダムと、伯爵令嬢クリスティーンの結婚初日。
アダムの「君を愛することはない」発言に、クリスティーンの容赦のないビンタが炸裂した――!
「な、ななななな、何をするんだ君はッ!?」
「ビンタです」
「いや、何をしたかを訊いたんじゃないよ!? 何故そんなことをしたのかを訊いたんだよ!」
「あなた様が結婚初日に開口一番、『君を愛することはない』などと、あまりにも失礼なことをヌかしやがったからです。確かに私たちは政略結婚の間柄。現時点ではお互いに愛情はないかもしれません。――ですが、こうして夫婦になった以上は、相手を愛する努力をするのが筋というものでしょう? その努力を端から放棄しようとしているのですから、妻として注意を促したまでです」
「いやいや、だからっていきなりビンタはないだろう!?」
「口答えするな!」
――スパーン!
「ぶべら!? 二度もぶったッ! 父上にもぶたれたことないのにッ!」
「それは大層お優しいお父上だったのでしょうね。ですが、私と結婚した以上は、二度と甘えは許されないと思ってくださいね」
「そんなあああ!!! オイ、お前たちも何か言えよ!? 当主が二発もビンタされてるんだぞ!?」
アダムからそっと目を逸らす使用人たち。
アダムの「君を愛することはない」発言には使用人たちもドン引きしていたので、むしろクリスティーンに対して「ナイスビンタ!」と内心拍手喝采していた。
「何だよぉおもおおお、私の味方はどこにもいないのかよぉおおお!!!」
「私が味方ですよ、アダム様」
「その味方にビンタされてるんだが!?」
「いつまでもウジウジするな!」
――スパーン!
「ぶべら!? 誰か助けてくれえええええ!!!!」
こうしてアダムは毎日クリスティーンにビンタされながらも、やがて立派な領主に成長したのでしたとさ。
めでたしめでたし
拙作、『12歳の侯爵令息からプロポーズされたので、諦めさせるために到底達成できない条件を3つも出したら、6年後全部達成してきた!?』がcomic スピラ様より2025年10月16日に発売された『一途に溺愛されて、幸せを掴み取ってみせますわ!異世界アンソロジーコミック 11巻』に収録されています。
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