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真夜中の誘拐未遂〜イシグロとレメディオス

「どこに行くの?」


 アマランタは眠そうに尋ねた。


「散歩。まだ夜にしか動けない。しかも今夜は何かざわつくんだ」


 イシグロはベッドにいるアマランタの頬にキスをした。寝ぼけ眼でアマランタは静かに眠りに落ちた。これまで寝たことがなかったようだ。安らかな寝息を立てた。

 イシグロは庭に出た。

 

 ずっとマリアは緊張して生きてきたんだ。この世界でも……か。


 レメディオスの部屋に侵入しようとする三人の影がいた。イシグロが紙巻き煙草を吸いながら尾行していたのも知らずに。三人は一直線にレメディオスのいる部屋に押し込もうとしていた。イシグロは三人目のサスペンダーをつかんで花壇で首をへし折ると、前の二人に続いた。


 イシグロはレメディオスを誘拐しようとして、麻袋と縄を持った連中に拳銃を突きつけた。ナイフを持った一人は諦めて、ナイフを床に落として降参した。


「誰に頼まれた」


 言葉が通じない。イシグロは震えるレメディオスに視線を落として、犯人たちに窓から逃げるように促した。彼らは窓から水へ飛び込むように植え込みへと逃げた。


「レメディオス、もう平気だ」


 イシグロは、レメディオスをベッドに寝かしつけた。廊下の扉は施錠されているのに気付いた。誰か屋敷から手引きしたようだ。


「お嬢さん、お怪我は?」

「たんこぶができた。あなた、強いのね。あれは誰?わたしをどうしようとしたの?殺しに来たの?」

「疑問だらけだね」

「いつかわたしは死ぬのに」

「いつかね。今じゃない。おじさんはママのお友だちだ。昔々からのね。君とママを守るために来た」

「守ってくれるの?」


 レメディオスはキョトンとした。

 

「わたしのせいでママは悪いことしないといけないの。お祖父様はね、裏で悪いことしてるの。今度の舞踏会でも悪いことしようとしてる。わたしのせいで。だからわたしがいなくなれば」

「そんなこと考えるな。君はママのすべてなんだ。悲しませるな」

「うん……」

「おじさんが調べてやるよ」

 

 イシグロは、レメディオスの頬に軽くキスをした。彼女は驚いて緊張していた。はじめてのキスらしい。


 □□□

 翌朝、アマランタは伯爵に書斎に呼び出された。ベッドにはイシグロが隣にいた跡があるし、肌も心も満ちていた。


「あれから具合はどうだ?」

「よく眠れるようになりました」

「処方が効いているんだな」


 あんなもの飲むものかと思いながら、やわらかな笑みを浮かべた。


「ロイロット伯爵夫人を殺せ」

「いつどこで?」

「時間と場所は後で伝える。レメディオスの命が惜しければ刃向かうなよ」


 マリア退室した。アマランタは暗黒街の伯爵に見込まれたようだが、小説版の何巻の話かもわからないし、そもそもマリア自身コミカライズの無料版しか読んでいないので、今はイシグロに頼るしかない。


 でもイシグロは漫画は読まない。

 大丈夫かしら。


「お義母様おかあさま、おはようございます。チョコレートお嫌いですか?」

「ごめんなさい。気が動転していてしていて何も覚えてないの」

「また買ってきますわ。街はいいところですよ。何でも売ってるし、お父様のお友だちもたくさんいて心強いわ」


 じゃ、街でずっといろ。


 今のところソフィアはコミカライズ無料版でも少し出るくらいだが、確かレメディオスを追いやる勢いで描かれていた。


 マリアには、コミカライズ無料版すら遠い記憶だ。この話のコミカライズ版なのかすら覚えていない。ちゃんと課金して読んでおくべきだったと後悔していた。

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