後編 3 祭りの夜
結局オレは……ナミちゃんには何も言えず、ただその姿を目で追いながら祭りの夜を迎えた。
「富江ちゃんに誘われたから出掛けて来るね」とナミちゃんが家を出るまで……
どのくらい時間が経ったのだろう……オレのスマホにオヤジから電話が掛かって来た。
「“せりあがり岩”まで泳いで来い!!」と
とにかくも全速力で泳ぎ着いて“せりあがり岩”をよじ登ると、例の“平らな岩肌”に丸太が組まれていて、その丸太に“大の字”に括り付けられたナミちゃんが居た。
剝き出しの裸の上に申し訳なさ程度に毛布が掛けられている。
その横には番犬の様に、裸のオヤジが蹲っていた。
「おお、来たか! じゃあオレは帰るからよ! ナミちゃんは明日の朝、船が迎えに来るまでこのままにしてろ!儀式だからな! 夜が明けるまでは動かせねえ」
オレは涙で目の前が見えなくなりながらも尋ねる。
「ナミちゃんは!! そのあと、どうなるの?」
「大木様のお屋敷へ搬入だ! “種付け”はひと月続くからよ!!」
それを聞いてオレは涙でグシュグシュになる。
「ケッ!! 何を泣いてやがる!! お前もさっさとその毛布を剥いで《《ヤ》》っちまえ!! いつまでもガキやってんじゃねえ!!」
オレは海パンのケツに隠し持っていたナイフを握りしめた。
けれども、オレを置いて海へ飛び込んでいったオヤジには何も出来なかった。
ただただ泣きながら、ナミちゃんを拘束していた縄を切った。
ナミちゃんはよほど抵抗したのだろう!! 岩の上に置かれたLEDランタンの薄明かりの中でさえ、どこもかしこも腫れ上がっているのが見て取れた。
解放されたナミちゃんは自らの手で掛かっていた毛布を剝ぎ取った。
ここで続くです。
短いお話なので“あざとく”しています<m(__)m>