前編 5 蛇の鎌首
僕は一人っ子だし……学校では元々、女子は少な目なので、最初、ナミちゃんとは上手く話せなかった。
それでも、ナミちゃんは僕の命の恩人で……僕の両親も僕以上にナミちゃんを可愛がってしまうような、いい子だったので、いつしか打ち解けて、一緒にテレビを見たりゲームしたりした。もちろん海にはしょっちゅうつるんで出かけた。
そんなわけでナミちゃんはまるで昔からの島っ子のように、すぐに小麦色になってしまった。
ただ、海だと僕の悪友もゾロゾロくっついて来るので、時々、ウチの段々畑にナミちゃんを誘って畑仕事のまねごとをしながら二人でトマトなどを齧った。
そんなある日、畑の向こう側からナミちゃんの悲鳴が聞こえて、僕は鉈を持ったまま駆け付けてみると、ナミちゃんの目の前へ蛇がぬらぬらとにじり寄っていた。
とっさの事で後ろから飛び掛かる様に鉈を振り下ろし、鎌首を持ち上げようとした蛇の頭を切り落とすと、ナミちゃんは叫ぶ事すらできなくて後ろへ飛び退き、しりもちをついた。
転がった“アタマ”を蹴とばし確かめてみる。
「目の後ろに線が無いから“ヤマカガシ”かも!! 噛まれてない??!!」
ナミちゃんは頷いたものの、まだブルブル震えている。
「“ヤマカガシ”って毒蛇?」
「マムシより毒は強いらしい」
僕のその言葉を聞いてナミちゃんはワンワンと泣き出してしまった。