最終話 “私”は……
私、斉藤樹は中学三年生の時に父を亡くし、母一人子一人で、あの小さな小さな島を出た。
高校を出てすぐ、今の会社に就職し、ささやかながらも親子つましく過ごして行けると思った矢先に母も亡くなり……長い独身生活の後、何とか嫁さんを貰った。
今は愛美と名付けた一人娘と三人で社宅暮らしだ。
妻は社宅生活に色々不満がある様だが、あの島に比べれば……なんと生き易い事か!!
そんなある日の事……
お出かけから帰って来た愛美はさっそく私にせがむ。
「ねえ~パパ!! かってきたにんぎょひめのマンガみせて!!」
「いいけどお隣に迷惑だから、音は小さくしてね 《《ナミチャ》》は出来るよね!」
「うん!」
買って来た人魚姫のDVDをセットすると、愛しい娘は私の膝の上に座ってマンガを観る。
「ねえ!パパはナミチャとママとどっちがすき?」
画面を見続けたまま私へ問い掛ける娘に……
私はキッチンに居る妻の目を盗んで、そっと囁く。
「ナミチャの方が好きだよ」
その言葉に……娘は私の膝にじゃれ付きながら口走る。
「じゃあ、いつかママをころしてあげてね。ナミチャのために」
終わり




