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第25話 真っ黒な世界

 働き始めの日、俺は意気揚々と会社に足を踏み入れた。待ち合わせの場所へ向かうと、そこには優しそうな顔をした先輩がいた。


「あら、田中君。時間より早めに来て流石ね」


 俺は人間の姿では田中という事にしてある。本名のジャックや人に呼ばれてるギューをうまく言い換えられないかと思ったんだが、さすがに無理で諦めた。本当はもう少し考えたかったんだけど、会ったばかりの吾郎にも聞かれたしな。


「よろしくお願いします」

「堅苦しくなりすぎなくて大丈夫よ。じゃあ、職場に案内するわね」


 綺麗で涼しいオフィスは、前の暑苦しい職場とは正反対だった。


(俺も…念願のデスクワークが…)


 希望を胸に部屋に入ると、そこには既に何人かがパソコンに向き合っていた。


「君が今日から入る田中君か!助かるよ」


 俺を見るやいなや、笑顔で1人のおじさんが寄ってきた。


「あ、部長。お疲れ様です」


 先輩が礼をしたので、すかさず俺もお辞儀する。出来る社会人は違うぜってところを見せつけてやろう。


 おじさ、いや部長は俺の手を握って、これからよろしくね!と目を輝かせた。おお、信頼されているぜ。一つ気がかりなのは、目の奥が笑っていなかった気がしたことだ。


 業務内容の説明も終わり、俺はさっそく仕事にとりかかった。先輩もそうだが、部長や他の社員も褒めてくれるのがとても嬉しかった。定時になり、俺が帰ろうとすると肩に手を置かれた。


「田中君、どうしたの?」

「いや、そろそろ時間なので」

「いやいや、本番はこれからだよ」


 俺はどうやら深淵を覗いてしまったらしい。


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