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第22話 優しすぎる吾郎

 吾郎と名乗るそのお爺さんは、俺を家にかくまってくれた。服も貸してくれたのは本当にありがたかったよ。多分あのままだったら俺捕まってたわ。


「お、ピッタリだな」


 風呂から上がった俺は、成人男性用の服を着た。着心地は良かった。ほんのりと線香の匂いがする。


「これは婆さんでな」


 吾郎爺さんは近くにあった仏壇を指さした。そこには大きな口をあけて笑っているお婆さんの姿があった。


「10年前に死んじまったよ、まぁあいつに悲しい思いをさせずに済んで良かったのかもしれないが」


 吾郎は近くに行って線香に火をつけた。俺も見よう見まねでやってみた。手があぶられそうになったのは内緒だ。


「ところでお前さん、どこか違うところから来たのかい?」


 目を開けた吾郎爺さんが放った一言は、ほとんど核心を突いたものだった。歳を重ねた感覚は研ぎ澄まされているのかもしれない。


「あ、はい。遠くから来て、途方に暮れてたんです」


 怪獣だったことは黙っておいた。驚かせると悪いし、何より怪しさが増して信じてくれないだろう。


「そうか、どこから来たんだ?」


 まっ、そりゃ聞いてくるよね。俺は一瞬の間に数多の可能性を考えた。その中で出した結論が、これだ。


「覚えてないんです」

「え?」


 いや、ふざけてるわけじゃないぜ?俺は元々怪獣だから、いくら眺めているとはいえ人間としての常識は欠ける。それなら記憶喪失ということにした方が、今後楽になるって思ったんだ。


「そうかぁ、大変だったんだなぁ」


 吾郎爺さんは深掘りもせず、むしろ情けを掛けてくれた。へっへーん作戦通り。


「そんでお前さん、これからどうするんだ?」


 これに関しては俺でも分かる。人間は仕事というものをしてお金を貰うんだ。俺もやらないといけないことは、薄々分かっていた。


「就活、やります」


 怪獣ジャック、300歳にして初の決意だった。おい誰だニートって言ったやつ。


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