第21話 人間が服を着る理由
なんとか人間たちを出し抜いて、俺は逃げ切ることに成功した。まぁ今となっては俺も人間になっちまったんだけどな。いまだに信じられねぇよ。
しっかし人間ってのは厄介な生き物だな、服着てないだけであんなに大騒ぎするんだから。別に命の危険があるわけでもねーじゃん。まぁ、人間には人間のルールがあるってことか。今となっては従う他ないかな。
さて、これからどうしようか。怪獣の頃には食べられていたものが、腹を下すようになっちまった。多分胃の構造も変化してるんだろう。
それに人間に戻る方法も分からない。これが一番痛いかもな。人間の食べるもの、一応今までも近くまで行ったことはあるけど、大体は何か通貨みたいなものを出して交換してた。
え?なんで通貨ってすぐに分かったのかって?昔な、俺の友達でパロって名前のめっちゃ頭が良い奴がいたんだよ。そいつの惑星で使ってたから覚えてるんだ。まぁ自慢じゃないけど、俺は頭が悪いから構造は理解できなかったけどね!でも、なぜか今なら仕組みを理解できる気がする。人間の脳になったからだろうか。
そんなことを考えていると、夕方になった。まずいな、皮膚が薄い分寒さを感じやすいんだ。だから人間は服を着るのか…俺は1つの結論を導き出してしまったぜ。
いやいや、そんなことを言ってる場合じゃないな、この状態で寝たら悪影響があるかもしれない。俺が困り果てていると、後ろの方で落ち葉を踏む音が聞こえた。俺が驚いて振り向くと、そこにはまた人間が。
(まずい!)
俺は慌てて逃げようとするが、その人間は叫ばずにこう言った。
「あんちゃん、真っ裸じゃねぇか。可哀想に、何かあったのかい?」
その優しそうなおじいちゃんは、俺の人生を大きく変えることになる。
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