第17話 ご本人登場で盛り上がらない状況が一番つらい
ここ2か月くらい、地球はずっと平和だった。いや、フラグでもなんでもなくて別にこれからも平和なんだろうけど。凶暴な怪獣も来ないし、俺もゆっくりさせてもらってたんだ。
ずっと山にいるのも飽きるので、人里に降りてきた。もちろん人とかビルは踏まないようにね。俺が友好的なので人間ももうビビらなくなった。てくてく歩いてたら、こんな会話を聞いたんだ。
「今度の大怪獣展のチケット取れた!」
「まじ?俺全然ダメなんだが」
長く住んでると人間の言葉も分かるようになったので確信する。ついに俺の時代が来た。
これは行くしかないと耳に集中して場所を聞くと、日本の東京という場所だと分かった。俺がいるところもたまたま日本だ。そこまで遠くないし行くしかない。
噂に聞いた大怪獣展当日、俺は身なりを整える。と言っても体洗うだけだが。やっぱりちゃんと格好いい姿で会いたいしね。
遠目で見ても分かるほど、大怪獣展は盛り上がっていた。外には実物大の怪獣の模型があった。あれ俺よりでかいんじゃないか。バレないようにこっそり近づく。
少し助走をつけて、ビルを踏まないように気を付けながら登場した。最近上手くなった火を上空に吐く。
「本物だ!すげぇ!」
「写真撮っていいですか?!」
「サインください!」
ってなったら良かったね。
「「うわあああああああぁぁぁ!!!」」
普通に逃げられたよ。歓声じゃなくて悲鳴だった。助走つけたのがより恐怖を煽ったらしい。お前ら怪獣好きじゃないのかよ。
自分が好きなものだとしても、実際に会うと違うってやつか。俺は大規模な蛙化現象を起こしてしまったのかもしれない。そのとき俺の目にある文字が入る。
「ん?ゴジ〇?」
どうやら人違いだったらしい。あほくさ、帰ろう。
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