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緑色の少年

作者: 雑賀崎紫蘭

昼休み。


今日は雨だから、みんな教室で遊んでる。


うちのクラス、5年4組もそう。

騒がしいったらありゃしない。



あたしは、晴れでも雨でも、昼休みは教室で本を読む。


晴れの日は、みんな外に遊びに行って教室は静かだから落ち着いて本を読めるけど、今日みたいな雨の日は今日で遊ぶからうるさくて嫌だ。




でも今日はいつもと少し違ってた。

いつもは教室や廊下を走り回っている子達が、まなちゃんの席に集まってる。

ヒソヒソ話しているかと思えば、いきなり「キャー!」と悲鳴が上がったりもしている。


あたしは気になって、読んでた本にしおりを挟んで、まなちゃんの席に行った。


「なにしてるの?」


あたしが声をかけたら、りなちゃんが答えてくれた。


「こわい話だよ!今ね、さくらちゃんが、すっごくこわい話してくれたの!」


なんかみんなでこわい話をして盛り上がっているらしい。


「ゆりちゃんはなんかある?こわい話!」


たつやくんに聞かれて、1個思い出した話を私はした。



「うちね、みきちゃんとともきくんは来たことあるから知ってると思うけど、2階建てなんだけど、1階は半分くらいが駐車場で、リビングとかあたしの部屋とかみんな2階にあるの。

だからいつも基本的に2階で暮らしてるのね。

で、この前、リビングで家族で夕ご飯を食べて、私は2階にあるトイレに行ったの。

それでね、トイレからリビングに戻ろうとしたら、目の前を緑色の男の子が走ってったの!」



「それでそれで⁈」


「その男の子はゆりちゃんになにかしたの⁈」


たたみかけるようにみんなは聞いてきた。


「ううん、ただ走ってっただけだよ」


あたしが正直に答えたら、みんながっかりしてた。


「なーんだ、ただ走ってっただけかー」

「でも、こわくない?うち、1人っ子だから男の子なんていないし、しかも緑色なんだよ⁈」


頑張って言い返しても、もう誰も興味を示さなかった。


挙げ句の果てには、

「ゆりちゃんさー、いつも本読んでるじゃん?その本に緑色の男の子が出てきたから、現実でも見たと思い込んじゃったんじゃないの?」

と、クラスのリーダー格のメグちゃんに言われ、あたしはもう何も言えなくなった。


本当のことなのに…。

あの時、あの緑色の男の子を見た時あたしは、一瞬本当に怖かったのに…。



午後の授業も終わり、あたしはお気に入りの傘をさして1人で家に帰った。


うちは両親共働きだ。

お母さんの仕事は不規則だから、曜日によって、あたしが帰る時間には家にいたりいなかったりする。

今日は木曜日だから、5時くらいまでは帰ってこない。


誰もいない家の鍵を開けて、2階の自分の部屋に行き、ランドセルをおろしてトイレに行く。

トイレを出たら、また自分の部屋に戻って、宿題を持ってリビングに向かう。

あたしはいつも、リビングでテレビを見ながら宿題をしてるから。



宿題を持って部屋を出たら、そこに緑色の男の子が立ってた。


あたしはびっくりして立ち止まった。

そしたら男の子が話しかけてきた。


「ぼくがみえるの?」


「え…?」


「おねえちゃん、ぼくがみえるの?」


はっきりと見えている。

髪の毛がなくて、顔は目のあたりがくぼんでいて、小さな丸い鼻があって、口は声と一緒に動いている。

服は着ていない。つるっとした、人形みたいな裸の体。

でもその形は、はっきりと見えている。


「うん…み、見えるよ…」


あたしは答えた。


「そっか!よかった!ありがとう、おねえちゃん!」


男の子は嬉しそうに笑って、で、消えた。

周りをキョロキョロ見ても、もうどこにもいないし、声も聞こえなかった。

小学生の頃に自宅で緑色の少年を目撃したことを思い出し、かなり膨らまして書きました。

あの子が何者で、何の目的で私の前に現れたのか、今でも謎です。

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