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20.第五の試練はガッツリ戦闘してもらいます。

『ここまでよく来たな。第五の試練を始める。覚悟は良いか?』心なしか天の声のテンションも高い。

「よし!最後だ!来い!」私も売り言葉に買い言葉で言い返す。

「油断しないでよ?」教授は不安そうに言う。

「大丈夫大丈夫。何が試練よ。簡単じゃない。」

「その油断が命取りなんだって!」教授が注意してくる。

「正直どんな試練が来てもなんとかなるでしょ。ガバガバだし。」

「まあ、確かにゴリ押しが通る不完全さはあるけどさ?一応まだ何がくるかわからないから慎重にね?」教授が言う。

「はいはい。慎重ですよ〜。」

「絶対慎重じゃない!」


『最後の試練を与える。挑戦者たちよ。このスーパーキメラを倒し聖杯のある部屋に進むのだ!』天の声がする。


「キメラだってさ。」

「キメラって強いの?」

「ダンジョンにいる奴はそんなに強くないよ。まあ、スーパーキメラだからわかんないけど。」私と教授で言い合っていると、背後から石製の重厚な扉が動く音がする。

唸り声が聞こえる。 暗闇の奥に赤い目が光っている。

「あっ、これは強い奴だ。」私は察した。教授も明らかなヤバさを感じ私の後ろに隠れる。


「ともかく教授は安全なところに…」私が言いかけたところでキメラは口から怪光線を放つ。

私が陰になっていた以外の部分はことごとく薙ぎ払われた。

「おう、殺意が高いね。」私は苦笑いする。

「ねえ、安全なところって?」教授が不安そうに尋ねる。

「そんなところはない。」私の言葉に教授は絶望した。


「じゃあどうすれば?」教授が震えながら質問する。

「戦うしかないんじゃない?」

「なんで他人事みたいに言うの?」教授はかなり焦っている。

「大丈夫。私も冒険者の端くれ。これくらいなんとかなるわ!」私は腰の短剣を抜こうとしたがない。そうだ。奴隷商人に拉致された時盗られたままだ。

「教授?何か武器になるものない?」私は教授に尋ねる。教授は無言で頷くとカバンの中を弄り何かを取り出す。

「鉛筆?」

「そう。ペンは剣よりも強しってね。学者の武器はこれなのさ。」教授はドヤ顔で鉛筆をユラユラさせる。

「殺すよ?あなたを。」

「すいません…」教授はしおれる。

「まあ、それでいいわ。」私は呆れながら鉛筆を受け取る。

「あっ、使うんだ。」教授は驚いていた。

「教授は死ぬ気で逃げ回って。」私が言うと教授はすぐに私の近くを離れる。


「さあ、来なさい。っていうか、タンクだけで魔物討伐とかありえないんだけど?」私が機嫌悪く呟いた瞬間キメラの怪光線が私に直撃する。やはり高威力だ。私でなければ挽肉にされる。

怪光線の効果がイマイチと判断したのか、キメラに付いているすべての頭がこちらを向く。ライオンや蛇、ドラゴン、鳥の頭が一斉に怪光線をチャージし始める。

「まずい!」私は焦って声を絞り出した。

爆音と共にキメラを要に扇型の広範囲が怪光線によって抉り取られる。

地面は円錐形に抉られている。私も足場がなくなったのでそのまま吹き飛ばされ壁に打ち付けられる。なんて威力だ。今の攻撃は私でなければ確実に消滅していた。一点集中させなくてもすべての頭で全方位に弾幕を張るだけでそこらの上級パーティーでも容易に壊滅するだろう。

「スーパーってレベルじゃないでしょ!」私はいきなり難易度が高くなった試練にキレながら立ち上がる。そのままキメラを視界にとらえた瞬間キメラは消える。

動揺した時、すでにキメラは私の懐に飛び込んできていた。そのまま全ての頭が私に噛み付く。

防御する間もなく全ての頭からの0距離怪光線をまともに喰らう。

「ちょっと!離し…」私の抵抗虚しく二射目を喰らう。

「やめて!離し…」三射目

「たすけ…」四射目

「だれか」五射目

「教授!」六射目

「誰か呼んで」七射目

「きて!」八射目


「わかった!誰か呼んでくる!」教授は私の救援要請を受けて出口の方まで走っていく。


・・・・・・・・・・・


数時間後…


「すまん。あの振り子のところ出れないわ。」教授は申し訳なさそうに戻ってくる。

だが、教授は異変に気づく。静かすぎる。この部屋で戦闘が起こっていたはずなのに全く物音がしない。

今の間に決着がついてしまったのか。だとしたら買ったのはどちらだ。教授は考える。

「イリーナさん?いますか?」教授は恐る恐る進む。


グルルルと動物の唸り声がした。この瞬間教授は確信する。イリーナは敗北した。

だが、せめて遺体だけでも確認すべきだ。ここで放って逃げるなんて人間のすることではない。

そっと物音のする方を見る。

丸まったキメラのフカフカの毛皮部分の上でイリーナは気持ちよさそうに寝ていた。蛇の頭がイリーナの頬を舐めている。ライオン頭も御機嫌斜めな猫のような顔で虚空を見つめている。

教授としては何が何だかよくわからないがとりあえず逃げようとする。

「あっ、教授!」イリーナが唐突に目を覚し指差してくる。

「ひっ!ごめんなさい!」教授がびっくりして振り向く。イリーナだけでなくキメラの全ての頭がこっちを向いていた。

「ぴっ…」教授は変な声を出して腰を抜かした。




「もう。教授が戻るの遅すぎて和解したわ。」イリーナはキメラを撫でながら言う。

たてがみをワシャワシャされたライオン頭が気持ちよさそうな顔をする。ドラゴン頭がイリーナに噛み付く。

「ほら。甘噛みしてくるよ。」イリーナは愉快そうに言う。

「言うほど甘いか?」教授は不思議そうに言う。

「このドラゴン頭だけ懐いてくれないんだよね。」

「ええ…」

「ほら。私を噛んだり引っ掻いたりしすぎて爪とか牙も丸くなったから噛まれても大丈夫よ?」

「大丈夫なわけないだろ!」

二人でそう話していると、唐突にドラゴン頭がイリーナの髪の毛に噛み付いた。

「やめなさいって言ってるでしょ!」イリーナの鉄より硬い鉄拳制裁がドラゴン頭を襲う。

気を失ったドラゴン頭が何かを吐き出した。


「ん?これは?」イリーナはそれを取り上げる。

「鍵だ!」教授は大声を出す。


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