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19.奴隷商人に攫われました。

 「…」攫われて知らないところに連れてこられて私は御機嫌斜めである。逆になんで御機嫌斜めで済んでいるのか不思議かもしれないが、まあそこはイリーナさんが図太いだけなので仕方ない。

被せられていた袋が取られる。まぶしい。

スキンヘッドのイカつい男が私の顔をまじまじと見つめる。

「いいな。顔のいい女は高く売れる。」そりゃあどうも。

周りを見ると数名の男女が震えている。


早速私は石造りの部屋に連れて行かれる。部屋の壁には炉があり水入りの桶がある。

「焼印を押す。押さえてろ。」スキンヘッドの言葉に男二人が私を押さえつけ背中の部分を出される。運の良い奴らだな。それ以上脱がしていたら私の拳でもって奴らはネギトロになっていただろう。

スキンヘッドが私の背中に熱々の印を押し付ける。

ジュゥゥゥという音がなり焼印が冷める。

「押せてない?なんでだ?温度が低かったのかな?」スキンヘッドは焦ってもう一本の焼印を押す。

「なんでだ?」もう一本も押す。


数分後、奴隷用に熱しておいた全ての焼印が冷えてしまったので奴隷への焼印は延期になった。

加熱担当がスキンヘッドに激詰めされていたが同情はしない。

だが、納期が近いようで私たちは休む暇もなく奴隷市場まで連れて行かれることになった。



「嗅ぎつけられたかもしれない。このアジトもさっさと引き払うぞ。」スキンヘッドが牢屋の外で話している。

「こいつらさっさと売って身軽になりましょう。」

「ああ。さっさと行くぞ。」

他の人たちが連れて行かれる。最後に私も立たされる。

「ほら、歩け!」背中を叩かれる。できることなら今すぐ逃げたいがこの包囲の中逃げることはできない。私は仕方なく目隠しをされて馬車に乗せられた。


・・・・・・・・・


憲兵たちが奴隷商人のアジトに突入する。

「くそ。勘づかれたか。」隊長が舌打ちする。

「とにかく、このアジトを調査しましょう。」副隊長の言葉に隊長はうなずく。

憲兵たちはアジト調査のために散っていく。


一通り調査をし終わった。特に手掛かりになりそうなものはない。

「さて、撤収するか。」隊長は落胆する。

「あのっ!隊長?」新人憲兵が何かを見つけたようだ。隊長は新人の指差すものを見て目を見開いた。

石壁に何か固いもので削られたような跡がある。それは文字のように見えた。

隊長は急いで部下を集めた。


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