19.ちょっと体重が増えただけで重戦車呼びは酷い。
旧王都に来て一週間。旧王都は良いところだ。面白いものはいっぱいあるし、美味しいものもいっぱいある。さらに美味しいものもいっぱいある。その上美味しいものが…
「なあ、お前太った?」竜太郎に率直な意見を言われる。
「…」
「ほら、ほっぺたが少しふっくらしてる。」竜太郎は私の頬を摘む。
「やめて…事実を突きつけないで。」
「これが本当の重戦車だな。」
「せめて中戦車くらいにできない?」
「でも、流石に主人公として体重管理ができてないのは良くないわよね。」私はため息をつく。
「減量にはどうすればいい?」私は尋ねる。
「ウォーキングとかじゃないか?」
「投げやりね。」
「他人のダイエットとかクソどうでもいいんだが?」正論で返されたので私は仕方なく運動することにした。
旧王都は珍しいものが多い。見るべきものはたくさんある。観光がてらウォーキングするのも悪くない。むしろそのために太ったまである。そう。そうなのだ。
「あれ?イリーナさんどこ行ったか知りませんか?」レオンが竜太郎に尋ねる。
「さあ。散歩でも行ったんじゃね?」竜太郎は本を読みながら返事をする。彼にも最低限のデリカシーはある。ダイエットのためとは言わなかった。しかし、彼の最低限のデリカシーが後々事態をややこしくするとも知らずに。
ずいぶん遠くまで来てしまった。旧王都の中心市街を離れ郊外の少し寂れたところまで来た。
迷子かと言われれば別にそういうわけでもない。中心市街にはいくつものランドマークがあるのでそちらの方へ向かえば帰れるはずだ。よって帰り道がわからなくてもなんの問題もないのだ。
最悪硬化して野宿でもいい。まあ、流石に野宿にも抵抗があるのでそろそろ帰ろうと思った。
ひとまずだいぶ歩いたので休憩のため近くの汚いベンチに腰掛ける。
休んだら帰ろう。これだけ歩けば痩せるはずだ間違いない。
しばらく休んでそろそろ行こうかと思った瞬間、いきなり背後から何者かに押さえつけられる。声を出そうとした瞬間さるぐつわをはめられ布袋を被せられた。その後手足を縛られるのがわかったあまりにも厳重である。
そのまま馬車に詰め込まれ私はどこかに運ばれた。そう。攫われたのだ。
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「最近、旧王都でも奴隷商人が活動しているらしい。」家臣が発言する。
「うむ。特に郊外での活動が活発化しています。なんとかしなければいけませんね。」別の家臣も難しそうに言う。
「憲兵も先日の損害から立ち直りしだい郊外の警戒も強化するよう指示しています。」家臣が冷静に言う。
「ああ。気をつけないとな。統治で恥をかくことはできない。なんとしても奴隷商人どもを摘発してやる。」アレックスは愛しのエレノアの顔を思い浮かべて奴隷商人撲滅を決意したのだ。
奴隷商人撲滅まで残り三日。




