18.はい囮よろしく。(自然な流れ)
「何かわかりました?」レオンが尋ねる。
「さあ、イケメンってこと以外は何も…」私はやれやれという顔をする。
「イケメン情報はみんな言ってることですからね。収穫0ですね。」レオンは残念そうに言う。
「他に何か情報源はないんですか?」エレノアが不安げに言った時、マグネスがぴくりとする。
「おい、囲まれてるぞ。」マグネスが警告する。
急いで辺りを見回すとすでに武装した集団に包囲されていた。
彼らは速やかに私たちの排除を開始する。私も対抗してタンクスキルを発動する。
自らを中心に魔力の流れを作る。スキルの効果範囲内に入った敵はなんとなく私を狙いたくなる。魔術と従来のタンクスキルを掛け合わせた催眠術的な技だ。元魔術師志望の私だからこそ使いこなせる技だ。
まずは敵の初撃の攻撃を全て吸う。
続いてマグネスが反撃しようとするがレオンが止める。
「まずはエレノアさんを避難させましょう!」レオンの言葉にマグネスは攻撃を中止し頷く。
「イリーナ、時間稼ぎを頼む。」マグネスはそう言うと私の返事を聞かずにレオンとエレノアを連れてそそくさと逃げた。
返事も聞かずにだ。信頼されてるんだよね?そうだよね?気を取り直して。
「全員かかってきなさい。バッチリ時間稼いであげるから。」私はファイティングポーズを取ると同時に複数人の男からボコボコにされた。
刺され殴られ射られ岩が頭にぶつかる。こいつら一般女性である私に対して一切容赦がないしなにより統率が取れている。ただの暴漢とか暗殺者ではなさそうだ。と思っていたらそのまま取り押さえられて縛られ地面に捨てられ彼らはエレノアたちを追っていった。
私は芋虫のようにのたうち回る。
無敵の防御力を誇る私だが、一つ弱点がある。こうして機動力を奪われて放置されることである。
「誰か〜誰か〜!」私は誰もいない裏路地でひたすら助けを求めることになった。
レオンとエレノアと棺桶を担いでマグネスは市街地を疾走していた。
「ここからどうします?」レオンが走りながら次の手を考える。
「竜太郎たちと合流しよう。そしてエレノアを安全な場所に預けてからイリーナと合流する!」マグネスは的確な指示を出す。
「エレノアさん、怪我してないですか?」レオンが尋ねる。
「私は大丈夫ですけどイリーナさんは?」エレノアは不安そうに尋ねる。
「ああ見えて上級冒険者なのでバッチリ時間を稼いで無事戻ってきますよ!」レオンは安心するように言う。一方私は芋虫になっていた。
「いたぞ!捕まえろ!」遠くからさっきの男たちが走ってくる。
「あまり時間稼げなかったみたいですね。」レオンは苦笑いするとエレノアの手を引いて逃げ出した。
マグネスは剣を抜くと地面をなぞり土煙を巻き上げる。それに乗じて3人は再び逃げた。
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「なに?私を暗殺だと?」領主の息子は報告に耳を傾ける。
「はい。武器の調達なども行われています。さらに、いつものフランクとかいう記者、彼とも会っていました。」
「間違いないな。反王制派テロリストだ。」家臣が頷く。
「そうか。私を殺しにな…いいね、私自ら打って出よう。」彼はそう言って立ち上がる。
家臣は困惑する。そんな家臣をよそに彼は涼しい顔で言い放つ。
「舐めてもらっては困る。それに、暗殺者をこちらから打って出たということが世に広まればエレノア嬢も振り向いてくれるだろう。」彼は口角を上げた。




