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18.この記者意識高いくせに使えねえな。

「なんの記事を書こうか…お茶のうまい店特集とか?いや、違うだろ?俺はエリート記者だ。

そんな有象無象の雑誌が書くような記事を書くべきではない。」記者のフランクは悩んでいた。

突如肩を叩かれて驚いて振り向く。

「なに驚いてんのよ。」迷宮都市で会ったことのある女が不服そうにこちらを見ていた。


「情報が欲しい?」フランクは首を傾げる。

「そう。あんた政治部だったか経済部なんでしょ?何かしら知ってるんじゃない?」私は尋ねる。

「まあ、確かに領主の息子の情報は色々と知っている。だが、私は記者だ。情報は金なんだよ。」フランクはわかってんのか?という顔をする。

「もちろん。対価は払うわ。」

「迷宮都市の通貨で?いらないよ?」記者は顔をしかめる。そう。迷宮都市はハイパーインフレ中である。

「違う違う。もっと冒険者らしい形でね。」私は首を振る。

「いや、流石に体を売るのは…」フランクは焦る。

「違うわ!お前は冒険者のことなんだと思ってるんだ!」私は机を叩く。

「違うよ。取材の護衛とかそっちだよそっち。あと、防御力が高くて怪我をしない一見弱そうな女だよ?やらせに使えるわよ?」私はニヤリとする。

「やらせ?お前は記者をなんだと思ってるんだ!」フランクは机を叩いた。

「お前は前科があるんだよ!」私も机を叩き返す。

「?」フランクは不思議そうに言う。そういえばこいつその時の記憶はないんだった。


「だがまあ、危険地帯を取材する時のことを考えれば良い取引かもしれないな。」フランクは考え込む。

「乗る?乗らない?」私は尋ねる。

「わかった。何が知りたい?質問される側に立つのは慣れないな。」フランクは笑った。

「じゃあ、領主の息子のことを色々教えてもらうわ。」私は質問を始めた。


「どんな人?」

「あまり表舞台には出ないから詳しいことはわからん。だが、まあ良い噂も悪い噂も聞かんな。」


「見たことはある?」

「遠くからだけどな。」


「どうだった?」

「イケメン。男の俺でもときめくくらいにな。」

「ほう?詳しく。」

「食いついたな?」

「どんな顔?」

「領主の母親に似て整った顔だ。幼い頃は女の子と間違えられたとか。」

「身長は?まあ普通だ。こっからもうちょっと伸びるんじゃねえか?」


「まあ、外見はそこそこでいいのよ。問題は性格。それを訊きに来たのよ。」私は真面目な顔になる。

「内面な。そうだな…教養溢れる聡明な男だと言われてるな。」

「もっとないの?優しいとか目下の者に厳しいとか。」

「いや、そこまでは知らん。プライベートのことはなかなか表に出ないからな。」フランクは悲しそうに言う。


「わかった。ありがとう。じゃあね。」私は席を立つ。

「もういいのか?」フランクは拍子抜けという顔をする。

「もういいわ。また協力が必要なら迷宮都市に呼びに来てね。」私はそう言うとその場を離れる。 そして最後に思い出したので一言。


「あなた、普段から知る権利がとか報道の自由とか記者の道は記士道だとか言ってる割に何も知らないのね。」私はせっかく時間をかけてここまで来たのにイケメンという情報しか得ることができなかったので腹が立ってそう言い捨てて帰った。

フランクは暴言がクリティカルヒットして日が暮れるまで呆然としていた。


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