18.政府の建物の周りをうろうろしていると警察に目をつけられる。
旧王都
旧王都はかつて王国の都があった場所である。過去に遷都したことで王都ではなくなったのだが、現在も王国で二番目の規模を誇る大都市である。
「日本で言う大阪、アメリカで言うニューヨーク、ロシアで言うとサンクトペテルブルクだな。」
「うわ、いきなり謎の呪文唱えやがった。怖。」
「呪文じゃねえよ!」
「まあまあ、喧嘩しないで!」エレノアが割って入る。
「ていうか、お嬢様まで来て大丈夫なのか?」竜太郎は不安そうに言う。
「本人が見ないと意味ないでしょ?護衛は私がバッチリこなすから。大丈夫。私タンクよ?」
「へえ、意識高いな。じゃあ、俺らは剣買ってくるわ。」竜太郎は旧王都に着くなりソフィーと共に別行動を開始した。
「じゃあ、リサーチ開始しましょう!」レオンが言う。
「「「おー!」」」私たち3人は拳を突き上げた。
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「で、具体的にリサーチって何をするんですか?」レオンが尋ねる。
「領主の評判は領民を見ればわかる。」マグネスがキッパリと言う。
「つまり、領民にそれとなく聞けば評判がわかるということですか?」レオンが尋ねる。
「そうそう。世間話の要領でそれとなくきくんだ。」マグネスは言う。
「やってみます!」レオンは自信満々に頷く。
「すいません!オーセン家の長男さんって浮気したりDVしたりするクソ野郎だったり…」レオンが直球の質問をしたので私とマグネスで口を塞いで裏路地に引っ張り込んだ。
「流石に直球すぎるぞ?」
「それとなくの意味知ってる?」マグネスと私にボロカスに言われレオンは困った顔をする。
「すいません。焦りすぎました。」レオンは反省する。
「焦りすぎ!」
「まあいいわ。私がそれとなくきいてくるから。」私は裏路地から出ようとする。
「大丈夫なんですか…?」エレノアが本気で心配そうな顔をする。信用されていない…
ここで私が決めてみせる。レオンにはない私の武器。ガールズトークだ。
「すいません〜観光に来てるんですけど宮殿ってどこにあるかわかりますか?」私は二人組で歩いている同年代の女性に尋ねる。
女性は男性より高い確率で領主の噂話を知っている。そこを突くのだ。
「一人で来たんですか?」背の高い方の女性が尋ねる。
「はい、ここの宮殿が素晴らしい出来だときいて見に来たんです。」私は普段より高いテンションで話す。
「いいですよ。近いですし案内しますよ?」背の低い方の女性が優しく頷いた。
私は得意げにレオンたちに合図を送る。
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「ここが宮殿ですよ。いつ見ても綺麗ですね。」背の高い女性がうっとりとしながら言う。
池と花壇に囲まれ大きな噴水のある庭園の奥にそびえ立つ真っ白な宮殿は美しさと厳かを兼ね備えた素晴らしい建造物であった。
「綺麗〜。」私は感嘆の声を上げる。これは普通に本心だ。冗談抜きでこの建物はあまりに美しい。
「すごいでしょ。この建物はこの街の誇りですから。」背の低い女性が得意げに言う。
「へえ、それなら、ここに住んでいる方のことも気になりますね。」私は興味津々という様子で言う。
「あ〜、そういえば、ここの息子さんはすごくイケメンって聞いたわね。実際見たことはないけど。」背の高い女性が言う。
「文武両道で魔術まで使える。人格者って噂ですよ?」背の低い女性がうっとりしながら言う。
「一度は会ってみたいわ。」背の高い女性もうっとりとする。
「ふむふむ。顔が良くて文武両道。魔術⚪︎。人格者…」私はメモを取る。
「何メモ取ってるんですか?」女性二人は訝しむ。
「ああ、いや、日記です日記。旅の日記です。」私はそう言って誤魔化す。エレノアが来ていることを悟らせるようなことがあってはいけないのだ。
ともかく、領民からの評判は悪くないようだ。
そういえば…私は思い出す。記者のフランクならそういうのも知っているかもしれない。教授もそういうものに詳しそうだ。もしかしたらこの街にいるかもしれないので見つけたら聞いてみることにした。
「じゃあ、ありがとうございます。」私は例を言ってその場を後にした。
「さっきの人なんだったのかしら。」背の高い女性が不思議がる。
「会ってすぐに宮殿の場所をきいて急いで去っていったわね。」低い方も頷く。
「なんていうか、急ぎすぎっていうか不自然だったわね。」高い方が頷く。
「それにメモまで取ってた。」低い方が補足する。
「「もしかして…」」二人は同時に同じ結論に辿り着く。
「「暗殺よ!」」二人はハッとしながら叫んだ。
「まずいわ!報告しなくちゃ!」背の高い方はヒステリックに叫ぶ。
「そうね!急ぎましょう!」低い方は走り出した。
「なに?不審者?」通報を受けた憲兵は眉間に皺を寄せる。
「宮殿を偵察していたらしい。メモまで取ってな。」
「街に入った時は男3人女3人だったらしいが、その内人組の男女が武器の調達のため別行動をとったという目撃情報が出ている。」
「しかも、顔が隠れるような服を着ている奴もいる。」
「しかも、男二人は武装していた。棺桶を担いでいる。あの中にも何かあるだろう。」
「明らかにクロだな。」憲兵たちの見解は一致する。
「我々旧王都の威信をかけ暗殺者を捕縛しろ!いいな!」隊長の呼びかけに憲兵たちは力強く返事をする。憲兵たちは装備を整えると街へ向けて出動していった。




