17.異世界人に時止め概念を説明するのは難しい。
魔女は迷わず逃げ出す。竜太郎もすかさず追う。
アダムも竜太郎を王が呼び止める。
「アパム!私を倒してから行きなさい!」私は挑発する。
アダムは生まれたて故純粋であった。彼はまずイリーナを倒すことにした。
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アパムと目が合った瞬間私は三発の打撃を喰らって吹っ飛ばされる。
壁に突き刺さる前に上からの打撃を喰らってぞ面にめり込む。
あいつは時間を止めると言っていた。つまり…どう言う意味?
目の前に突然無数の岩石が現れ押しつぶされる。
私はなんとか岩の下から這い出る。理解できない。気がついたら吹っ飛ばされているし気がついたら岩が落ちてきている。まるで途中で居眠りしたような感覚だ。
竜太郎は時間を止める能力だと言ったが、それ以上説明はしなかった。
また後ろにアパムが現れ、彼の拳が後頭部に直撃する。
ますます意味がわからなくなる。留太郎が残したヒントから推察するしかない。
「時間を止める?時間を止めてどうするの?時間を止めても時が止まるだけで私たちは動けるんじゃないの?いや、その時間の中に私たちがいる?時間が止まると私たちも止まる。つまり私が時間ってこと?え?私時間なの?つまり止まった時間の中で動けるアパムは時間じゃないってこと?いや、そもそも私が時間じゃないから私じゃないアパムは時間なのでは?でも、時間を止めるってことはあなたが時間ならおかしいわよね?ってことはあなたは時間じゃないはずなんだけど、私も時間じゃないのよ。つまり時間ってなんなの?」私はアパムに殴られながら質問する。
「何を言っているんだ?」アダムは殴りながら首を傾げる。
「いや、時間を止めるってどういうことかなって。」
「哲学的だな。」アダムの動きが止まる。
そう。今まで時間停止という概念に触れたことがないイリーナにとってすぐに時間停止の概念を理解することはできなかったのだ。
「えっと、つまりはあなたは時間を止めるんでしょ?時間を止めたら時間が動かなくなる。止まるとどうなるの?」
「えっと、つまりだな。こう、現在過去未来があったとするだろ?その中で、常に時は未来に流れていくんだが、その流れを止めてずっと現在にするんだ。でもって俺はその時の中を動いているんだ。」アダムは説明する。
「いやいや、時間が止まってるなら全部止まるよね?どうやって動くの?」
「どうやってって、なんでだろうな?」アダムもこんがらがる。
「完璧な人類ならうまく説明できない?」
「そうは言ってもなぁ…動けてしまうから説明は難しい。」
「じゃあ、時間を止めて動くとどうなるの?」
「10秒ほど時を止められる。自分以外の全てが停止しているんだ。」
「でも、10秒ってわかるってことは時間は止まってないんじゃない?」
「…。確かに。」
「つまり、時間を止めてる訳ではないってこと?」
「かもしれない。自分以外のものの動きを止める能力とでも言えばいいか?」
「なるほど。自分以外の動きを止める能力ね。」私は頷いた。
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「というわけで、彼の能力は時間を止めるわけじゃなくて、自分以外のものを止める能力なんじゃないかって思うわけ。」
「その方が正確かもしれないな。」私とアダムは、激しく揉み合っている竜太郎と魔女に結果を報告する。
「「なんの話してたんだお前らは!」」二人は怒鳴る。
竜太郎は魔女に追いつくことはできたが、お互い魔術の威力が同じくらいで埒があかなかったので結局肉弾戦で勝負を始めたのだ。
「いや、留太郎が頓珍漢なこと言うからでしょ?ねえ。」私が言う。
「ああ。母さん。俺は時間を止めてないんじゃないかと思うんだ。」アダムも言う。
「そんなことどうでも…」魔女が言いかける。
「魔女のくせにそのへんおろそかにするのは良くないわよ。私の昔通ってた魔術師養成所の学長の魔女はすごくそういうの熱心に研究してたわよ?」私は魔女を諌める。
「そんなこと知るか!」魔女は怒る。
次の瞬間魔女は突然消えてアダムの横に立っていた。
「あ、助けてくれてありがとう。」魔女は礼を言う。まだ時間が止まる感覚は慣れない。
「母さん…」アダムは魔女の目を見る。
「な、何?」魔女は緊張する。
「時間を止めるということに対して徹底討論すべきだと思う。」
「なんでよ?!」アダムの言葉に魔女は素っ頓狂な声をあげた。
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レオンたちが洞窟の奥に到着した時、見知らぬ二人組と竜太郎とイリーナはあーだこーだと言い合っていた。
「何やってるんですか?」レオンが尋ねる。
これ以上ややこしくなることを嫌がった竜太郎は和平の話ということにしてレオンたちを言いくるめた。
「リュウ!頬に怪我してますよ?」ソフィーが駆け寄ってすぐ回復魔術を使う。
「ああ、大丈夫大丈夫。」竜太郎は笑う。
「タンク女!タンクなのに何やってるんですか???」ソフィーは私の胸ぐらを掴む。
「ソフィー?あとで仕返しが俺に来るから止めよ?」竜太郎が止める。
魔女とアダムは時間についてぶつぶつ話している。
「なんだこれ…」村のリーダーは激しく困惑した。当然だ。
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こうして時間を止めるという能力についてははっきりと説明できないまま話し合いは終わった。
だが、不本意な形であれ、その後魔女と村人は対話の機会を得ることができた。
魔女としてもアダムを完成させた以上この土地に用はなかった。それに、彼女は新しい目標ができた。それは時間を止めるという概念を研究することである。
魔女というのは元々知識欲が人一倍強い。そんな彼女にとって今日の話し合いは探究心をくすぐるには十分であった。
魔女はアダムと共に旅に出た。魔女の探究心は止まらないのだ。
そして、依頼を達成した私たちは村で丁重にもてなされた。竜太郎はさっさと私に酒を飲ませて酔わせると絡まれない遠いところに逃げた。
今回の成果により当然私たちの名声は上がる。そして、同時に私たちが勝手に名前を使ったエレノアの株が上がるのは道理であった。
次回・エレノア、王族に見初められる編
「なあ、そういえば俺の剣帰ってきてないんだけど?」竜太郎はつぶやいた。




