16.爆破予告は捕まるのでやめよう。
「あれ?なんの騒ぎ?」私は新築ギルドの前に人が集まっているのをみてレオンに尋ねる。
「今日は新築ギルドお披露目の日ですからね。お祭りでしょうね。」レオンが言う。
「お祭り?お祭りなのね?」
「なんかイリーナが言うと不穏だな。」マグネスが困ったように言う。
「でもなんかお祭り感が足りませんね。」レオンが言う。
「お祭り感ってなんだよ。」竜太郎が文句を言う。
「なんかこう…楽しそうじゃないというか。笑顔が足りない。」
「よくわからん。」竜太郎はため息をつく。
「どうしたのだ?」マグネスが群衆の一人に尋ねる。
「いやあ、俺もよくわかんねえんだけどさ。なんでも新ギルド開設記念式典を中止しないとギルドを爆破するって脅迫文が届いたらしいんだ。おっかねえよな。」おっさん冒険者が呆れたように言う。
「全くだ。迷宮都市も物騒になった。昔はこんなことなかった。こんな迷宮都市に誰がした?そう!政治だ!政治の責任だ!君たちもそう思うだろ?」後ろに立っていた冒険者が喚き出したので私たちはそそくさとその場を離れた。
「それにしても爆破予告なんて怖いですね。」レオンが言う。
「なあ、迷宮都市って政治のせいで物騒になったの?」竜太郎が尋ねてくる。
「元々こんなんだよ。」私は素っ気なく返す。
そこにギルドの偉い人がやってきて鐘を鳴らし皆を呼び集める。
「緊急クエスト発令!新ギルド内の爆弾捜索任務!」そんなビラが撒かれる。
今回はパーティーなどの関係はなく有志での参加だ。参加者にはそれ相応の報酬と昇格資格を与える。今回の任務はそういうものであった。
「行けイリーナ。」光の速度で竜太郎が言う。
「判断が早い!」私は竜太郎を平手打ちしようとしたが避けられる。やはり油断させて捕まえないとダメだ。
「イリーナさん…」レオンが真面目そうに言う。
そうだレオン。こんな失礼なやつになんとか言ってやってくれ。
「気をつけてくださいね!」レオンは曇りなき笑顔で激励してくれた。もう行くことは確定しているようだ。
ということで行ってきます。
十数人のイかれた冒険者たちが新ギルドに入る。新築の良い木の匂いがする。もしかして匂いで爆発物の位置がわからないか?わかるわけない。素直に探すことにした。
他の冒険者たちは上の階へ行く。私は数人の冒険者たちと一階を探すことにした。階段を上がるのがしんどかったので私は一階だ。
さて、まず爆発物を探すためにはまず、自分が爆発物を仕掛けるのであればどこに仕掛けるかを考える必要がある。
やはり支柱だろうか。柱の根本を探す。 なかった。
カウンターの下だろうか。 ない。
観葉植物の下? ない。
嘘予告なのでは?私はそういう結論に至る。だとしたら安心だ。だいたい、片っ端から探しても見つからない程度の爆発物であれば仮に爆発したとしても大事には至らないだろう。
現在簡単に調達できる爆発物でこの建物を破壊しようとするなら大体タル2〜3個分必要だ。くらったことがあるから分かる。それほどの量はどこにもなかった。仮に爆発しても内装が吹き飛ぶだけで建物本体へのダメージは…内装?私は嫌な予感がする。
ごめんなさいと心の中で呟きながら壁材を剥がす。
「おぉ…」私は壁一面に敷き詰められた爆発物をみてたじろいだ。なぜこれが爆発物だとわかったのかって? 耐久試験と称してこの爆発物で私の周りを埋め尽くして点火空高くまで吹っ飛んで地面に突き刺さったことがあるからだ。
「みんな!聞いて!ギルドの壁の中に爆発物が仕込まれてる!」私は外に出て皆に呼びかける。
群衆はざわつく。
「それじゃあ人が入るのは危ないな。」偉い人が腕を組んで考え込む。
「まず中にいる人を全員撤収させて?そして、絶対にギルドの周りに人を近づけないで。」知り合いの偉い人は周囲に指示する。そして彼はそのまま同じ口でこう言った。
「そして、イリーナちゃんは中に入って一人でできるだけ爆発物を解除して。」平然と言ってのける。
私は人カウントされてないのか…私は肩を落としながら一人で解除作業を始めた。
「いや、素直にやるのかよ。」竜太郎の声が聞こえた気がした。




