15.なんかお前熊の匂いしない?
「こっちから反応があります!」ソフィーが岩肌を指差す。
「どこだ?中にいるのか?」マグネスが尋ねる。
「大まかな位置しかわかりません。」ソフィーが申し訳なさそうに言う。
「この中にいるんだな?じゃあ俺の技で穴を開ける!下がってろ!」竜太郎が剣を構える。
「必殺、大穿孔出雲石見銀斬(シルバーAPバレット)!」膨大な魔力を一点に凝縮し繰り出す刺突は岩山すらも抜く。
岩山には直径2メートルほどの穴が開く。
「穴をあけた!地下空間は見えるか?」竜太郎が技で発生した爆音に負けないよう大声で尋ねる。
「地下空間は土煙で見えないですが、あそこに入り口は見つかりました!」レオンは別に隠されていたわけでもない洞窟の入り口を指差す。
「いや、先に言えやー!」無駄に技を出した竜太郎が怒鳴る。
「いや、なんか魔力凝縮し始めてて言い出せる雰囲気じゃなくて…」レオンが申し訳なさそうに言う。
「別にいいよ!魔力がもったいねえだろ!」竜太郎が怒る。
「ちょっと!喧嘩しないで!行きますよ!」ソフィーが二人を押して洞窟の入り口まで向かった。
レオンたちは洞窟の前に立ち突入のタイミングをはかる。
「待って、何か出てきます!」ソフィーが皆に警告する。
皆が身構えると、洞窟の奥の暗闇から血だらけの熊がのっそりと出てきた。
マグネスと竜太郎がいつでも攻撃できるよう武器を構えるが、熊は特に興味無さそうに彼らのわきをすり抜けていった。
「熊?なんだったんですかね?」レオンが不思議そうに言う。
「さあ。」マグネスが首を傾げる。
「とにかく入りましょう!」ソフィーの言葉に皆頷いた。
四人は中にはいる。凄まじい血の匂いがする。
ゴブリンたちは皆血まみれで倒れている。
「うわあ…あの熊がやったのか?」マグネスは不快そうに言う。
「熊ってのはさっきの熊のことか?それともイリーナとかいう二足歩行の熊のことか?」竜太郎はうまいこと言ってやったというふうな顔で言う。本人に聞こえていないのが残念だ。
と言った瞬間竜太郎は何かに抱きつかれた。
「だーれーがーくーまーだー!」獣臭くてベトベトな何かが竜太郎の耳元で不気味に唸る。
「いやあああああああ!」竜太郎迫真のガチビビり。
「誰が熊だ!」イリーナである。
「いたのかよ!ってかくっさ!」竜太郎は熊の唾液でベトベトになったイリーナを見て鼻をつまむ。
「うっせー!臭いのはわかってるよ!」私はすぐ皆と距離をとる。
「これ全部イリーナさんがやったんですか?!」レオンがドン引きしながら死屍累々の現場を指差す。
「違うからね???」私は全力で否定する。
「お前が硬化させた拳で殴ったんだろ?」竜太郎が悪ノリする。
「違うって!熊だって熊!」私が言うと竜太郎は「熊?」と言いながら私を指差す。
「クマ!」私は叫ぶと竜太郎を腹パンでダウンさせた。
「リュウ!!!」ソフィーが頭を抱える。
・・・・・・・・・・
「結局、ゴブリンたちは何をしようとしていたんだ?」マグネスが尋ねる。
「さあ。黒い奴だった。」
「それじゃあ特定できないな。」マグネスが残念そうに言う。
「そうよね。見当もつかない。」
「悪魔か何かですかね?」レオンが推測する。
「悪魔が生贄を噛みきれなくて帰るとかありえないだろ。」竜太郎がバカにしたような口調で言う。
「それもそうね。」私は納得する。
「さあ、帰りましょ。お風呂にも入りたいし。」私は帰り道を指差す。
「そうですね。」レオンが頷く。
「その必要はない。」竜太郎が割って入る。
「必要ないって?なんで?」私は尋ねる。
「だって…」竜太郎は剣を構える。
「必殺!徳島鳴門大渦潮!!!」竜太郎の必殺技が発動する。水・魔力・音(衝撃波)の奔流が私を中心に発生してそのまま私を飲み込んでしまった。
「うぇ…ゲホ…ゲホ…」私は水浸しになって項垂れる。
「どうだ?綺麗になったろ?」竜太郎は得意げに言う。
そのまま私はしばらく咳き込むと倒れる。
「え?」竜太郎は青ざめる。
「いやいや、なに倒れてんだよ。別に死ぬようなことしてないだろ?」それでも動かない私を見て竜太郎はやらかしたかもとめちゃくちゃに焦っている。
「いやいや、死んだふりだろって?」竜太郎が顔を引き攣らせながら私の呼吸を確かめにきたところで私は隙だらけの竜太郎をヘッドロックし逃げられないように腕を硬化させる。
「え?」竜太郎は間抜けな顔で困惑する。
「今回は二倍くらいで勘弁してあげるわ。」そう言って私は竜太郎の顔に拳を叩き込んだ。
・・・・・・・
「前が見えねえ…」
「水が冷たい…」私と竜太郎はぼやきながら下山する。
「最初は険悪でしたけどすっかり仲良しですね二人とも。」
「ねー。」ソフィーとレオンは楽しそうに話している。お前らの目は腐っているのか?
・・・・・・・・
目が腐った二人は置いておいて私たちは無事下山できたし、助けた少女二人の取り計らいで私は無事風呂に入ることができた。
そして村の人からお礼の言葉を浴びせられつづけながら私たちは報酬を受け取り見送られながら帰った。
私たちはギルドに戻ると今回の件を報告。認定証を受け取り昇格が一歩近づいた。
その後私たちは酒場で打ち上げをしたようだがその間の記憶はない。竜太郎の顔がまた腫れていたので何があったかはなんとなく察した。
中級冒険者昇格進捗度・30/100




